2018 Fiscal Year Research-status Report
医療介護費の有効利用・削減に向けた提言:大腿骨骨折後レセプトビッグデータ分析から
Project/Area Number |
17K08899
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森 隆浩 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50384780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大腿骨骨折 / 費用対効果分析 / 医療経済研究 / 医療費 / 介護費 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度事業の結果、大腿骨骨折後の医療費は約260万円、月当たりの介護費は約11万3千円と推定した(1)。平成30年度は平成29年度の結果を用い、骨折予防に関する費用対効果分析を施行し学会発表を行った。年1回の点滴薬であるゾレンドロン酸は週1回の内服薬であるアレンドロン酸と比べ費用削減効果があり(日本プライマリ・ケア連合学会学術大会)、テリパラチドは強力な骨折予防効果(特に椎体骨折)を有する薬剤であるが高額であり、アレンドロン酸と比べ費用対効果に優れない(日本骨粗鬆症学会総会)という結論を得た。
我が国の超高齢化社会において年間の医療・介護給付費の合計は50億円を超え、大きな社会問題となっている現状を鑑み、医療経済研究はますます重要性を増す。ゾレンドロン酸に関する費用対効果分析は我が国において1例あるも今回の研究は先行研究の内容を補完しており、またテリパラチドに関しては我が国において先行研究はなく、今年度の研究は非常に意義深い。今年度の研究内容は、平成29年度に得られた大腿骨骨折後の医療費、介護費を用いて骨折予防に関する費用対効果分析を行い、医療、介護費の有効利用、削減方法を社会に提言する方針、という本研究事業の主目的に合致する
(1) Mori, T., Tamiya, N., Jin, X. et al. Arch Osteoporosis (2018) Estimated expenditures for hip fractures using merged healthcare insurance data for individuals aged ≧75 years and long-term care insurance claims data in Japan. Archives of Osteoporosis (2018) 13: 37
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では関東にある2ヶ所の自治体から2010年以降の医療レセプト、介護レセプト、人口動態、要介護認定情報のデータ(計7年分)のデータを入手する内諾を得ていたが、1個の自治体(A市)からはデータが遅れて届き、もう1ヶ所(B市)からは結局入手できないことが決定した。研究が当初の予定通りに進まない時の対応は研究費申請の際に予め検討しており、別の自治体(C市)からすでに入手済のレセプトデータを用いて研究計画に基づき研究を行い、初年度(平成29年度)には原著論文の受理に至った。また、A市から予定より遅れて入手したデータは2019年1月の時点でデータクリーニングが最終的に終了し、使用可能な状態となっている。
平成30年度は平成29年度に施行した研究結果を用いて費用対効果分析を施行し結果を学会発表しており、計画は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、平成30年度に学会発表した2個の費用対効果分析の結果を原著論文として投稿、受理をを目標としている。上記に加え、当初の計画通り、骨粗鬆症に伴う大腿骨骨折以外の骨折(例:腰椎圧迫骨折、手首の骨折など)にかかる医療費と介護費の総計を算出する。大腿骨骨折の医療・介護費を算出した際と同様の解析手法を用いる予定である。それらの費用も、今後費用対効果分析を行う際に重要なパラメーターである。当該年度中にデータ解析を終了し、学会発表、論文投稿を目標としている。
以前施行した費用対効果分析において(2)我が国の骨粗鬆症を有する高齢女性に対し、デノスマブはアレンドロン酸と比較して費用対効果に優れるという結論を得た。デノスマブは半年に1度の皮下注射での投与のため、週1回内服のアレンドロン酸と比較して継続性に優れることが費用対効果に優れる主因と考えられた。この研究を施行した際に直面した問題点は、我が国において骨粗鬆症の薬剤の継続率に関する先行研究が極めて乏しい点であり、優先的に取り組むべき課題であるとの認識に至った。従って今年度は、2個の自治体(A市、C市)から入手した医療・介護レセプトデータを用い、骨粗鬆症関連の骨折を生じた者のうち、骨折後に骨粗鬆症薬剤が開始された割合、更には24か月後にその薬物療法を継続してい割合,およびその説明因子を検討するという分析を施行する方針とした。当該年度中にデータ解析を終了し、学会発表、論文投稿を目標としている。
(2) Mori T, Crandall C, Ganz D (2017) Cost-effectiveness of denosumab versus oral alendronate for elderly osteoporotic women in Japan. Osteoporosis International 28:1733-1744
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Causes of Carryover |
自治体A市からのレセプトデータの入手に遅れが生じたため、データクリーニングのために予定していた人件費・謝金は初年度(平成29年度)は使用していない。また学会参加回数も当初の予定より少なかったため旅費の額も少なくなった。それらの繰越に加え、平成30年度は国際学会への参加を予定していたが、諸事情により参加を取りやめたため、旅費も予定していたより少なくなった。
平成31年度は最終年度であり、研究協力者への人件費・謝金、国際・国内学会への参加(研究内容の発表、情報収集・意見交換など)のための旅費、論文作成のための諸経費(英文校正、Open Accessのための費用)、研究に必要なパソコンやソフトウエア(統計解析や論文作成のため)に使用する計画としている。
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Research Products
(3 results)