2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K08903
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
齋藤 英子 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 研究員 (60738079)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医療経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、今まで個別に収集・利用されている大規模疫学コホート研究データと、がん発症を把握することができるがん登録情報、診療報酬明細情報を連結し、マイクロシミュレーションを用いた統合解析から、個々人のがんリスク要因となる生活習慣とがん発症、その後の医療費負担の変化を分析し、生活習慣の改善による将来医療費の節減効果を明らかにすることを目的とした。本年度は、昨年度に引き続き、日本で最も罹患数の多い胃がんに焦点を当て、禁煙とピロリ菌除菌による将来医療費へのインパクトを明らかにするステップとして、マイクロシミュレーションの手法を用い、胃がん発症のプロセスに個人の喫煙状況・出生年などの背景要因を組み込んだ自然史モデルを拡張した。マイクロシミュレーションモデルにおける介入要因として、内視鏡検診とピロリ菌除菌のシナリオを検討し、介入によって期待できる死亡率減少効果と生命年延伸効果を検討した。さらに、大規模疫学コホート研究データとがん登録情報、診療報酬明細情報を連結したデータを用い、がんと診断されて1年以内の胃がんにかかる直接医療費、薬剤医療費およびその後のフォローアップ費用をステージ別に検討した。本研究結果の一部は、World Cancer Congress 2018にて発表し、現在国際専門誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、医療費の将来予測を行うための主要なステップである胃がんの自然史モデルを構築し、マイクロシミュレーションを用いて複数の介入シナリオを検討し、論文化を進めた。論文化にあたっては、研究協力者の協力を得て以下の通り研究を行った。具体的には、1)平均余命、喫煙率、一日当たり喫煙本数、がん生存率などモデルに用いるパラメータを、人口動態統計、国民健康栄養調査、国立がん研究センターが公表するがん罹患全国推計値など公的統計資料など、データソースを悉皆的にレビューした。2)先行研究の系統的レビューを悉皆的に行い、シミュレーションモデルに用いるモデルの遷移確率などのパラメータをメタアナリシスにより推計した。3)シミュレーションに特化したTreeAge Proソフトウエアを用い、モデル構築から妥当性検証までを行った。4)胃がんについては、内視鏡検診の効果を介入シナリオ別にその利益と害を検証し、最適な検診のあり方、ピロリ菌除菌効果、喫煙などのハイリスク群での介入効果を検証し、論文化をすすめた。5)次世代多目的コホート研究データと診療報酬明細情報の連結データを構築し、胃がんの直接医療費推計を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、2019年度は以下の通り研究を進める予定。 ・次世代多目的コホート研究で収集された参加者データベースと連結した診療報酬明細情報データから胃がん医療費の予測モデルを構築し、個別医療費予測のための回帰分析を行い、年代・喫煙状況別の個人の年間医療費を推計する。さらに、推計された年間医療費を、個人の喫煙習慣に従って分類するモデルを構築する。 ・胃がんのシミュレーションをさらに拡大し、検診とピロリ菌除菌、および喫煙状況別の介入による費用対効果、および将来医療費へのインパクトについて推計する。
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Causes of Carryover |
シミュレーション用ソフトウエアのライセンス更新が本年度は不要となり、来年度に更新する予定であるため。
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