2018 Fiscal Year Research-status Report
トランスレーショナル・リサーチを担う人材育成としての大学院教育の検討
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17K08904
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長村 文孝 東京大学, 医科学研究所, 教授 (90282491)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トランスレーショナル・リサーチ / 大学院 / 標準シラバス / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品等のシーズ開発は、アカデミアが主体となり、トランスレーショナル・リサーチ(TR)の推進が国家的課題である。本邦では、医師の大学院への進学、特に基礎医学系への進学が研修医制度導入後激減し、基礎研究の衰退が懸念されている。そのため、欧米と同様にnon-MD研究者の役割が重要となると推測される。本研究では、TR推進のための基礎研究の充実、人材の育成を見据え、大学院における実態を調査し、有効な教育目標や教育項目を設定することを目的とする。 平成30年度は、①全国国公私立大学院のシラバス・カリキュラム調査、②海外情報の収集、③標準シラバス案の概要作成、を実施した。①のシラバス・カリキュラム調査では、国立:52大学、公立:49大学、私立:139大学を対象とした。専攻別では836専攻を対象とし、このうち、国立:343専攻(41.9%)、公立:123専攻(15.0%)、私立:353専攻(43.1%)であり、昨年度よりも専攻数の増加が認められ、TRの重要性が広く認識された結果であると考えられた。シラバス内にTRに関する講義(医療開発に関連しない生物統計、あるいは一般的な研究倫理等は除く)を確認できたのは、149専攻と平成29年度と比較し、4倍近く増加していた。内訳は、国立:83専攻(55.7%)、公立:26専攻(17.5%)、私立:40専攻(26.8%)であった。両年度のデータは、データベースとして取り纏めた。②ではライデン大学、パスツール研究所等の欧州の機関を主に調査した。ホーム・ページでは掲載できないか、特にシラバスは設定していなく、特定の領域での数日のコースとして設定されていることが多く、また、具体的な教育項目の記載には乏しかった。平成29年度の情報と合わせて③の検討資料とする。③については、先端医療実施機関の職員向け標準シラバスを基に、シラバス案の項目立ての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は下記の事項が実施予定項目であった。①全国国公立医歯薬看護系大学院のシラバス調査を平成29年度に引き続き実施する、②海外情報を収集し取り纏める、③標準シラバス案の作成、が実施予定項目であった。 ①については平成29年度と同様に全国国公立医歯薬看護系大学院シラバスを公開情報に基づいて検索し、平成29年度と平成30年度が比較できる形でデータをとりまとめた。②については欧州の機関をホームページの公開情報を基に検索した。シラバスは公開されていないか、あるいは数日程度の特定の領域の技術に関してのコースが多く、今回の研究に活用できる情報は欧州からは乏しかった。③は研究代表者が先端医療開発を行う医療機関の職員向けに作成したシラバスを用いて、①のデータと比較した。最終年度に向けてデータのとりまとめを行うことができた。このように当初計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成31年度は、下記の①から③の項目を実施し、研究を完了する。 ①全国国公立私立医歯薬看護系大学院のシラバス調査を継続して実施する。平成29年度・30年度に作成したデータ・セットに基づき、ホーム・ページ等公開情報にてシラバスを入手する。シラバスは研究代表者がチェックし、先端医療開発、TR、臨床試験に関連した授業/演習をピックアップする。シラバスから収集・入力する内容は、講習・演習名、対象者、単位数、講習・演習の項目、教育目標、授業内容、テキストとする。また、公開情報としてとりまとめ、ホーム・ページ等で公開する。 ②海外情報のとりまとめ:平成31年度は主としては米国の情報を更新する。この情報を平成29年度・30年度に収集した情報と取り纏め、1つの体系だったデータ・セットとする。 ③標準シラバス案の作成:①と②の情報を基に、平成30年度までに作成したシラバス案を平成31年度の早期に完成させる。これを、研究代表者が担当している大学院講義においてシラバスとして用い、トランスレーショナル教育としての講義内容を一新し、学生からのアンケートにより、フィードバックとして完成版を見直して改訂の検討を行う。また、ARO協議会、関東甲信越の大学病院臨床試験アライアンス、あるいは国立大学病院臨床研究推進会議等の教育担当者より意見を聞く機会を設定し、フィードバック情報として活用する。
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Causes of Carryover |
欧米の教育カリキュラムに関して、ホームページ等の公開情報に基づき平成30年度にまとめ、実地調査あるいは専門家との意見交換と情報収集を行う計画であった。平成30年度は欧州の情報を調査したが、平成29年度に実施した米国と比べて情報量が少なかった。そのため、実地調査についてはより情報を収集し、それに基づいて計画を立てるべきと判断し、平成31年度に実施することととした。そのため平成30年度は当初計画よりも執行額が低くなったが、計画達成には支障はなかった。
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Research Products
(5 results)