2018 Fiscal Year Research-status Report
価値共有の認知による信頼関係に基づく人由来検体・情報のガバナンス体制の構築
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17K08916
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 恵子 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (10398456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 達也 京都大学, 医学研究科, 講師 (00452342)
松村 由美 京都大学, 医学研究科, 教授 (10362493)
鈴木 美香 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (60555259)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人体由来試料 / 医療情報 / 研究利用 / 胚盤胞 / ES細胞 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
医療機関などで診療や研究の際に得られる人体由来の組織や医療情報(以下、検体・情報と略)を、研究機関や企業が研究や医療の目的で利用する際は、市民の理解や信頼を得ることが必要であり、社会の合意に基づいたガバナンス体制を構築することが必須である。本研究では、患者・市民、研究者などの意見をもとに、医療機関における検体・情報のガバナンス・モデルを構築することを目的とする。平成30年度は、以下の課題を検討した。 1)数カ所の研究機関における検体・情報の利用や規制の実態を調査した。A機関では、研究やバイオバンク構築のために前向きに検体を採取する際の手続きや、それらを外部の研究機関に提供する手続きはあるが、それ以外の日常診療の検体の利用は、統一した方針・ルールは策定されていないことが明らかとなった。一方、B機関では、来院者に検体・情報を研究利用することを伝え、同意しない人は意思を表明するオプトアウト方式を採用していた。 2)市民が、身体や組織・細胞などをどう扱ってほしいか、どのような身体観を持っているかなどを聴取する目的で、大学のアカデミック・デイにポスター出展し、来場者と対話した。多くの人は、「組織を使って研究していることが伝えられ、拒否できる機会があればよい」と答え、その条件としては、意義のある研究をすること、ルールをつくって守ることなどが挙げられた。 3)台湾のバイオバンクの責任者と面接し、運営体制や現状について意見を聴取した。 4) 胚盤胞を保有する人45名を対象に、人体試料提供に関する意識を聴取し、解析した。対象者は、「知識や技術を悪用しないか」、「細胞を大切に扱っているか」といった、研究者の態度を気にかけていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究施設における検体・情報の研究利用については、統一のルールを決めているところもあるが、持たない施設もあり、施設によりさまざまであった。また、一施設の中でも、バイオバンクの試料についてはルールあるが、それ以外の検査や研究の残余検体の扱いについては、決められていないこともある。市民の感覚としては、試料・情報を研究利用することについては肯定的だが、研究者側がルールや手続きを整備することを求めており、それらを作成して明示する作業が必要である。 また、調査研究のまとめや論文化、試料・情報の扱いの院内ガイダンス案作成については、引き続き実施して早急に公表する予定である。報告書の作成にも着手しており、作業を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
市民を対象とした意識調査(試料・情報をどのように位置づけているか、研究利用するには何が必要か、臨終期の医療においてなにをよしとするかなど)を実施し、人体や人体由来試料に対する感覚や考え方を把握する。また文理融合のネットワークの研究者における意見交換を通じて、文化的・歴史的背景や伝統的な自然観や生命観に配慮しつつ把握する。そして、先端的研究の研究者や医療情報を用いた研究を行う人を対象に、ガバナンス体制のありようについて、引き続き聞き取り調査を行う。 これらに基づき、人体と人体由来の検体・情報の基本的な考え方、ガバナンスに必要な方策(体制やルール)を報告書としてまとめる。報告書は論文やウェブサイト掲載を通じ広く意見を求める。報告書で提示する基本的な考え方をもとに、体制やルールのモデル案について、研究者、患者・市民、政策決定者などのステークホルダーに提示して評価し、意見を踏まえて改訂を繰り返す。 また、英国や台湾の状況も参考にしつつ、人体保護法や指針などのモデル案を提示する。さらに、具体的方策として、研究施設における理念・ビジョンや行動基準、施設内ガイダンスやルールのモデル案も策定する
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Causes of Carryover |
2年目は、台湾や英国などに調査に行ったが、別研究費などを利用できたことも多かったこと、海外の研究者へのヒアリングも、来日した研究者を対象にしたことなどから、旅費や出張費などがかからなかった。 次年度は、引きつづき関係者への調査を実施する。また、一般市民を対象にした調査や、研究対象者に対する意識調査も実施する予定である。
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Research Products
(3 results)