2021 Fiscal Year Research-status Report
職場における合理的配慮の形成-乳がん患者と職場の相互作用
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17K08934
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
榊原 圭子 東洋大学, 社会学部, 准教授 (60732873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 英子 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 部長 (50539088)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳がん / 治療と仕事の両立 / 上司・同僚とのコミュニケーション / 病気の開示 / 支援的な職場風土 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、がんの治療と仕事の両立のための患者から職場への働きかけと職場の対応、すなわち患者と職場間でのコミュニケーションの状況を明らかにし、がん患者が仕事を継続するための示唆を得ることである。 2021年度の第一の成果は、乳がん経験者と職場メンバーとのコミュニケーションの状況を探索するために行ったインタビュー調査の結果をまとめた論文、「乳がん治療と仕事の両立のための患者と上司、同僚とのコミュニケーション」が、日本ヘルスコミュニケーション学会誌に受理(2021年11月)、掲載(2022年4月号)されたことである。研究の結果、病気や治療方法に関する積極的な情報入手、周囲へのがん罹患の開示、職場復帰後の継続なコミュニケーションが重要であることが明らかになった。また、がん罹患を開示でき、治療しながら働き続けることを当たり前とする職場風土の醸成の必要性も示唆された。乳がん患者と職場メンバーとのコミュニケーションに関する研究は欧米ではいくつか見られるが、日本の乳がん経験者を対象としたものは本研究が初めてであり、その意義は高い。 第二の成果は、質問紙調査の実施である(2021年12月)。職場の上司・同僚との積極的なコミュニケーションを行っている乳がん経験者がどのくらいいるのかを明らかにすることを目的としている。女性のがん患者のコミュニティに調査への協力を依頼し、720名の乳がん経験者の協力を得た。現在データの解析中である。 第三の成果は、研究代表者の所属する東洋大学の社会貢献センターの公開講座において、一般市民および医療関係者向けの講演会を開催し、情報発信を行ったことである。調査結果を報告するとともに、調査に協力いただいた方から乳がんの治療と仕事との両立のために必要とされることについてお話しいただいた。成果を社会への還元する貴重な機会であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一に、企業に対する調査が未実施である。これは乳がん経験者の治療と仕事の両立について、企業がどのような意識や体制で受け止めているのかを明らかにすることを目的としていたが、COVID-19感染拡大への対応で企業はきわめて多忙となった。そのため、調査協力を依頼する適切なタイミングではないと判断し、実施を見送った。 第二に、米国在住の乳がん経験者へのインタビュー調査が未実施である。この調査は合理的配慮が当たり前になっている米国では、乳がん患者と職場の上司、同僚とのコミュニケーションはもっとオープンに行われているのではないか、という仮説を明らかにすることを目的としている。当初は米国に在住する患者を訪問してインタビューを行う、もしくは対象者が日本に帰国したタイミングで行う予定であったが、これもCOVID-19の拡大により困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
企業に対する調査については、今回の研究期間内での実施は見送る予定である。その理由は、いまだにCOVID-19の状況が落ち着かず、企業側に本調査への協力を依頼しても、それに応ずる余裕がなく、協力が得られにくいと考えられるためである。これについては、今後、COVID-19の状況が落ち着いたころに実施することを念頭に置き、他の方法での準備を進めている。具体的には、企業に勤務する乳がん経験者で、勤務先企業内でのがんに対する理解促進を図る活動を計画している方と協力し、勤務先におけるがんに対する理解度、がんに罹患した従業員に対する職場の対応などについて調査することを検討している。研究期間内での調査実施は難しいが、調査の計画を進めていく。 米国在住の乳がん経験者へのインタビュー調査については、米国へ渡航しての実施は現段階ではまだ困難であるため、2022年度にオンラインでのインタビューを計画している。
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Causes of Carryover |
米国在住の乳がん経験者3名に対するインタビューは、COVID-19により全体的に調査スケジュールが遅れたため、実施できていない。これについては2022年度に実施する予定である。そのための謝金支払いおよびインタビューデータの文字起こしのための費用として、99513円を次年度に繰り越すこととした。謝金は10,000円×3名、インタビューデータの文字起こしは、15000円(1時間半)×3名=45,000円、残る24,513円は、研究の最終とりまとめのための文献購入や文具、消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)