2018 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイント阻害薬治療を最適化するためのHLAを含むバイオーカー探索
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17K08952
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
南 博信 神戸大学, 医学研究科, 教授 (60450574)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 免疫チャックポイント阻害薬 / HLA / バイオマーカー / 免疫関連有害事象 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤の副作用のうち薬疹や間質性肺疾患(ILD)など免疫が関与すると考えられるものは特定のHLAが危険因子となる。免疫チェックポイント阻害薬では免疫関連有害事象(irAE)が問題となるが、免疫チェックポイント阻害薬の作用機序を考えると、irAEおよび効果はHLAに依存すると予想される。我々は先行研究において、ゲムシタビンとエルロチニブ併用療法によるILDは特定のHLAの組み合わせとオッズ比52の高い相関を示すことを見出したが、この実績に基づいて、免疫チェックポイント阻害薬を使用するがん患者でHLAを解析し、irAEおよび効果と関連するHLAの特定するために研究を実施している。 「免疫チェックポイント阻害薬、免疫共刺激分子抗体薬による免疫関連有害事象、有効性とHLAの関連についての観察研究」を倫理委員会による審査・承認の後に実施している。組織学的もしくは細胞学的に診断された各種がんに対して免疫チェックポイント阻害薬を投与する20歳以上の患者で、免疫チャックポイント阻害薬や免疫共刺激分子抗体薬(市販されている抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、治験薬を含む)を初回投与予定の患者を対象としているが、安全性の観点から活動性の自己免疫疾患および再発性の自己免疫疾患の既往を有する患者、活動性の肝疾患・内分泌疾患・感染症・間質性肺疾患、HBs抗原陽性またはHBc抗体陽性またはHBs抗体陽性の患者は除外している。 現在までに協力を得たがん患者のうち40例でHLA解析を実施した。こうちの1例で高度の肝障害をきたしたが、一般的に免疫関連肝障害と関連するHLA型を有していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のための前向き研究である「免疫チェックポイント阻害薬、免疫共刺激分子抗体薬による免疫関連有害事象、有効性とHLAの関連についての観察研」は倫理委員会による審査・承認を受け開始した。本年度は症例集積を継続するとともに一部の症例ではHLA解析も実施した。すでに40例の各がん患者でHLAのタイピングを終了している。免疫チェックポイント阻害薬による肝障害をおこした1例のHLAが一般に免疫関連肝障害と関連すると言われているHLA型と一致していることが判明したなど、研究の進捗は計画通りに進行していると言える。 免疫関連有害事象は障害臓器の治療開始前からの炎症状態に依存する可能性もあり、がん種ごとの解析が必要と考えられるため、現在、さらなる症例集積を継続するとともに、すでに登録した症例の臨床情報の収集・整理を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに免疫チェックポイント阻害薬治療により重度の肝障害をおこした症例のHLAには注目して解析したが、軽度も含む肝障害、ILD、腸炎、腎障害、副腎不全、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、下垂体機能低下症、下垂体炎、神経障害、1型糖尿病、皮膚障害等の免疫関連有害事象を National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE v4.0)に従って判定し、HLA型関連を解析する。関連はオッズ比とその95%信頼区間で解析する。その際、すべての免疫チェックポイント阻害薬を使用した患者全体で解析を行う。一方、標的が異なるとHLAとの関連も異なる可能性があるので薬剤ごとにも解析する。また、がん種ごとの解析も探索的に行う。 免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果にはHLA型以外にも、PD-1やPD-L1の発現、腫瘍へのリンパ球浸潤が関連する可能性があるので、本研究ではこれらも解析する。PD-1やPD-L1の発現解析では、既報で結果が一定していない免疫組織染色ではなくRNA in situ hybridization (ISH)技術を応用したRNAScope法を用いる。この方法ではRNAを1コピーから検出可能で、ターゲット遺伝子の細胞内局在を検証可能である。また、プローブを変えることによりPD-1、PD-L1のみならず免疫関連分子の発現も検討することができる。標準で用意されていない分子については、カスタマイズしてプローブを作成することも可能である。免疫組織染色と比べてこの方法では一般的にバックグランドのシグナルが低いため、より詳細な検討が可能である。また、PD-1、PD-L1の発現は腫瘍細胞および間質細胞で別々に解析する。
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Causes of Carryover |
すでに症例の登録、検体採取、HLA解析を行なっているが、これから解析する検体もある。さらに、今後もある程度の免疫関連有害事象が生じるまでは症例集積を継続する必要があり、また腫瘍組織におけるPD-1やPD-L1の発現、リンパ球浸潤などHLA以外の解析も行なう計画である。これらに研究費を使用するため、確実に使用する予定である。
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