2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanism of insulin-induced changes in the expression of drug transporters and the establishment of a method to predict the changes in genetic function
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17K08954
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (80423573)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | P糖タンパク質 / インスリン / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の病態メカニズムの一つであるインスリンの分泌不全は、薬物トランスポーターの発現変動を引き起こすことが糖尿病モデルラットで示唆され、1型糖尿病患者では薬物トランスポーターの基質薬物の体内動態が変化することが報告されている。前年度までに、インスリンがP-gp発現量を減少させる機構として、ABCB1 mRNAの3'非翻訳領域に対するAgo2結合の増加が関与することと、結合の増加はmiRNA発現量の増加によるものではなく、miRNA のAgo2結合量が増加した結果、ABCB1 mRNAの翻訳抑制を介してP-gp発現が抑制されることが示唆された。本年度は、インスリンがP-gpによる薬物輸送機能にどのような影響を与えるのかについて、検討を加えた。インスリンがP-gpの基質薬物であるドキソルビシンの薬効に及ぼす影響を解析した結果、インスリン曝露によりドキソルビシンのIC50が約45%低下し、薬効の増強が示された。ドキソルビシンの効果増強におけるP-gp発現の寄与を明らかにするため、P-gpノックダウン条件下でインスリン曝露を行った。その結果、P-gpノックダウン細胞ではインスリン曝露によるドキソルビシンの薬効の変化は認めなかった。インスリン曝露による細胞内ドキソルビシンの蓄積量を測定した結果、インスリン曝露により蓄積量は約50%増加した。以上の結果から、インスリンはmiRNAのABCB1 mRNAの結合量の上昇を引き起こすことでP-gp発現を抑制し、薬物動態の変化やそれに伴う薬効の変動の原因となることが示唆された。P-gpの基質薬物を服用するインスリン治療患者においては、薬物動態や薬効が異なる可能性が考えられる。当該患者における適切な投与設計を行うためには、本研究結果で得られた基礎的な知見に基づき、患者を対象とした検証が重要である。
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