2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K08960
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
村上 元 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70613727)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 主要組織適合遺伝子複合体クラスI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では胎児期におけるウイルス感染による薬物依存への影響を評価するため、胎児期のウイルス感染による発達障害モデルとして世界的に用いられている母胎免疫活性化モデルを用いた。すなわち、炎症誘発剤であるpolyinosinic-polycytidylic acid(poly(I:C))を胎児期に投与した。母体免疫活性化は炎症誘発剤の濃度や投与時期の少しの違いでその効果が大きく変わり得る。従って、本実験で用いた母胎免疫活性化法により生まれた胎児が成獣になった後、従来の報告と同様の行動異常を示すかを調べるために、①新規場面における行動量測定、②行動量の日内変動、③社会行動テスト、④プレパルス抑制試験を行った。それぞれの行動試験は注意欠陥多動性障害、自閉症、統合失調症の評価で一般的に用いられている試験である。その結果、いくつかの行動試験において母胎免疫活性化群と対照群において有意な差が見られたことから、本研究で用いている母胎免疫活性化法は適切に行われていると考えられた。次に同様の母体免疫活性化法により生まれた胎児が成獣になった後、薬物依存の指標としてよく用いられるコカイン投与による行動感作を測定した。その結果、コカイン投与による行動感作は母体免疫活性化群とその対照群で差は見られなかった。更に異なる濃度のコカインを用いて行動感作を測定したが同様に差は見られなかった。現在は母体免疫活性化による薬物依存への影響を詳細に調べるために、依存物質の種類や、薬物依存様行動実験の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
胎児期におけるウイルス感染によるドーパミン神経細胞への影響を調べるために母体免疫活性化法を用い、母胎免疫活性化法により生まれた胎児が従来の報告と同様にいくつかの行動試験で異常が見られたことから、本研究で用いた母胎免疫活性化法が適切に行われていることを確認した。行動試験では世界的によく用いられている3チャンバーを用いた社会的相互作用試験を立ち上げた。また母体免疫活性化が腹側被蓋野のドーパミン神経細胞に与える影響を調べるため、ドーパミン神経細胞への影響の全貌を調べることを目的とし、cubicを用いた脳が透明化法を立ち上げた。一方、本研究で確立した母体免疫活性化法は薬物依存の指標として用いられるコカインによる行動感作には影響を与えないことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で母体免疫活性化法による薬物依存の指標であるコカインによる行動感作への影響は無いことがわかった。この結果はこれまでに多数報告されてきた母体免疫活性化による薬物依存行動の増進とは矛盾する結果である。考えられる主な理由の1つとして薬物の違いが挙げられる。本研究では依存薬物としてコカインに着目したが、これまでの多くの報告では依存薬物としてアンフェタミンが用いられている。コカインとアンフェタミンの作用機構は類似するところが多いが、異なる部分も多く存在する事が知られている。従って本研究でもコカインの代わりにアンフェタミンを用いて同様に行動感作を調べる事で母体免疫活性化の影響が見られる可能性がある。また薬物依存の評価として、本研究では依存薬物による行動感作を調べたが、マウスが自身で薬物を摂取する自己投与実験系の方が好ましい。従って母体免疫活性化されたマウスが成獣した後、コカインの自己投与実験を行い対照群と比較する事で母体免疫活性化の影響が見られる可能性がある。 また、行動実験に用いたマウスの凍結保存してある脳を用い、ドーパミン系を中心に様々な脳部位における遺伝子発現の変化を網羅的に解析する。具体的にはpoly(I:C)を用いて作成したウイルス感染モデルマウスと、ウイルスが含まれていない溶液を同様に投与した対照マウスからドーパミン神経細胞が存在する腹側被蓋野を含む様々な脳部位を切り出す。それ等の試料からmRNAを抽出し、RNAシーエンス解析と定量的PCR法により様々な免疫関連遺伝子とドーパミン関連遺伝子の発現を網羅的に比較する。
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Causes of Carryover |
予想と異なる結果が得られ、新たな実験計画を行っているため。
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