2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08962
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
渡部 正彦 帝京大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90301788)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タンパク質相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマであるうつ病の主な病因の一つに神経のシナプス伝達障害が挙げられることから、神経伝達物質貯蔵小胞の細胞内輸送機構の詳細を解明することはとても重要である。さらに、この過程に密接に関与するRabタンパク質の制御機構解明は、既存の抗うつ薬とは異なる新たな薬物標的となり得ることが期待できるため、このRabタンパク質に関わる活性調節経路の重要性を明らかにすることを目的として本研究を行った。 本研究において重要な五つのタンパク質の一つであるタンパク質GTRAP3-18を細胞内に強制発現させると、とても強い細胞毒性を示した。このことから、GTRAP3-18は他のタンパク質と共存させることでその毒性が緩和されるのではないかと考え、GTRAP3-18と共に細胞内にまずRabタンパク質を強制発現させたところ、GTRAP3-18による細胞毒性を抑えることに成功し、これら二つのタンパク質における関係性を明確にすることができた (Biochem Biophys Rep 2018 Mar;14:16-9)。また、GTRAP3-18を細胞内に強制発現させると認められる強い毒性を何とか抑える術は他にないかと試行錯誤を行った結果、蛍光タンパク質GFPを結合させたキメラタンパク質GFP-GTRAP3-18としてなら、GTRAP3-18の毒性を緩和できることを明らかにすることができ (Protein Expr Purif. 2018 Aug;148:40-45)、この手法は毒性の強いタンパク質を細胞内に強制発現させる実験系において困っている多くの研究者に新たな光を与えることができたのではないかと推察される。 さらなる細胞内における関係性を明らかにしようと、他の残りのタンパク質の発現ベクターの構築に取り組んでいたが、流行が始まったコロナの影響が強く、在宅勤務や大学講義のリモート対応等に追われ、研究ができないというコロナ問題に突入してしまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究において重要な五つのタンパク質の一つであるGTRAP3-18の発現ベクターを作製し細胞内に導入してGTRAP3-18を強制発現させると強い毒性を示したので、GTRAP3-18への結合報告があるRabタンパク質の一つRab1aをGTRAP3-18と共に細胞内で共発現させたところ、Rab1aとGTRAP3-18が共発現している生細胞の観察に成功したことから、Rab1aとGTRAP3-18との関係性を明らかにすることができた。さらに、GTRAP3-18と他の残りのタンパク質との細胞内での関係性を明らかにしようとした際、GTRAP3-18の毒性が強いことで細胞内におけるGTRAP3-18と他の残りのタンパク質との関連性を調べることができなかったことをヒントに、キメラタンパク質としてGTRAP3-18を細胞内に強制発現させることでGTRAP3-18の毒性を緩和することに成功した。 そこで、GTRAP3-18と他の残りのタンパク質との細胞内での関係性を明らかにしようと残りの三つのタンパク質CK2、Hsp90、HDAC6の発現ベクターの作製を試みていたが、昨年より流行が始まったコロナの影響が強く、在宅勤務や大学講義のリモート対応等に追われ、研究ができないというコロナ問題に突入してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで研究実施場所の移動や研究実施環境を新たに一から作り上げるなど想定範囲外の状況に直面する中でコロナ禍に突入してしまったことで当初の研究計画通りとはいかなかったが、初年度よりコロナ禍に突入するまでに新たな現象を見出し、研究を進め、毒性を有するタンパク質の細胞内発現で上手くいかず困っている多くの研究者へ一筋の光を提供できる等、意義ある研究内容を査読ある研究雑誌に報告できてきていたので、期間再延長申請が承認いただけたことをうけ、今後は当初の計画に沿って、五つのタンパク質のうち、残りの三つのタンパク質CK2/Hsp90/HDAC6に着目し、ヒト由来培養細胞HEK293およびSH-SY5Yを用いて強制発現系を構築させ、それぞれのタンパク質の機能を調べていく予定である。その中でもまず、GTRAP3-18とRabの2種類のタンパク質の発現ベクターしか作製に成功していないので、残りのCK2/Hsp90/HDAC6三つのタンパク質の発現ベクターの構築を行っていく。作製でき次第、ヒト由来培養細胞HEK293およびSH-SY5Yに導入・強制発現させ、細胞に及ぼす影響を調べ、Rab1aとGTRAP3-18の関係のように残りのCK2/Hsp90/HDAC6三つのタンパク質に関して、その役割・機能を明確にしていく。 また、Rab1aとGTRAP3-18の関係性は明確にすることができたが、互いに直接結合しているか否かは未だわからないので、CK2/Hsp90/HDAC6三つのタンパク質に関する情報が得られた後に、五因子がどのような組み合わせで複合体を形成しているのか、詳細を明らかにしていく。 以上のごとく、研究実施環境を整備し当初の研究計画通りに行えるよう、コロナ問題と向き合いながら一歩ずつ邁進していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では五つのタンパク質CK2、Hsp90、HDAC6、Rab、GTRAP3-18すべての発現ベクターを作製して検討を行う予定であったが、これまでお世話になった教授が退官となったことに伴い研究実施場所の移動を余儀なくされたことや、これまで使用していた機器の新たな購入や設置など研究の再稼働のための研究費の使用という想定外の用途が発生してしまい、当初の想定通りとはいかず、当初の計画の遅延が起こり、更に現在まで影響しているコロナ問題に突入してしまったため、期間再延長申請が承認いただけたことから、本年度に使用予定となっている。 したがって、当該助成金は当初の計画ではおこなえなかった発現ベクター作製費や抗体購入費および研究実施環境整備費等に使用していく予定である。
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