2018 Fiscal Year Research-status Report
Regenetative medicine using decidouous teeth preparing for future diseases
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17K08966
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
大越 章吾 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (70231199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 博 日本歯科大学, 生命歯学部, 客員教授 (30089784)
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
廣野 玄 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (80386268)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯髄幹細胞 / 再生医療 / 肝細胞 / 劇症肝炎 / 薬剤毒性スクリーニング / 歯の細胞バンク / テーラーメード医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞は多くの細胞系統に分化し、遺伝子導入を必要としないため、有力な再生医療の細胞資源である。歯髄幹細胞は脱落歯からも得られるため、歯髄バンクがスタートしている。本研究の目的は①歯髄中の間葉系幹細胞から分化させた肝細胞が将来、疾患に罹患した時に用いる薬剤の副作用や毒性スクリーニングのための細胞資源として有用性を明らかにする。②更に歯髄細胞バンクの効果的な活用法の1つとして確立することである。 具体的な研究実績の概要は①歯髄MSCの肝細胞への分化誘導、培養上清中のアルブミンや尿素濃度の測定。②RT-PCR法による遺伝子発現解析や免疫組織化学。③ラットへ肝炎モデルの作成と細胞導入による肝炎抑制効果の検証である。 これまで我々はActivin、InsulinをFirst stepにHGF、FGFをSecond Stepとして培養上清に加えることによって紡錘形の歯髄MSCが多角形の肝細胞類似細胞に分化することを示した。またこの細胞はアルブミン産生や尿素代謝能を有し、機能的にも成熟肝細胞の機能を有することを示した。 更にこの歯髄MSC由来の細胞が重症肝炎モデルに有用であるか否かラットの急性肝障害モデルに尾静脈から細胞を投与して検証したところ、有意な生存率上昇は観察されなかったが、有意に肝障害の程度を改善させるという予備的結果を得た。今後この効果がMSCの免疫抑制効果によるか、あるいは細胞の肝への生着効果による機能代償なのかを検証する必要がある。また今後3次元培養法によって、肝細胞の機能を高度に維持する細胞培養系を確立するとともに、今後テーラーメイド医療として自己の歯髄由来の肝細胞を未来の医療における薬物毒性スクリーニングに応用できるか否かを模索していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①歯髄から得られた間葉系幹細胞(MSC)はHGFなど特異的な増殖因子の存在下で多角形の肝細胞様細胞に分化した。②肝細胞特異的蛋白であるアルブミンやフィブリノーゲンの産生が確認された。また肝特異的転写因子であるHNF-4の発現が確認された。③培養上清中に塩化アンモニウムを加えると、上清中に尿素が検出されるため、この細胞に尿素サイクルが存在することが示唆された。これらの実験によって、歯髄細胞から分化した肝類似細胞が成熟肝細胞の機能を有することが確認された。 次に動物実験へと進むことができた。ラットのConA+D-Galactoside肝障害モデルにMSC細胞とコントロール培養上清を尾静脈から投与して生存率を比較した結果細胞投与群で生存率が上昇した (論文投稿中)。また共同研究によって51Crでラベルした細胞をヌードラットの肝動脈から動注してAutoradioimmunographyで検出した結果、7日後まで生存細胞によると考えられるシグナルが検出された。 以上より歯髄MSCから誘導した肝細胞類似細胞の機能を解析し、さらに動物実験でこの細胞がラットの肝で1週間ほど生存することが示されたという点は、本研究の進捗状況が概ね順調であることを示すものである。 一方本研究のもう一つの課題であるこの細胞の3次元培養下における薬剤スクリーニングアッセイに関しては、3次元培養の完成にやや時間がかかっている段階である。しかし研究分担者の石川はビーズ法など新たな培養法を開発しており、今後も共同研究体制を維持していくことによって進展が図れるものと予測している。一方日本歯科大の歯の細胞バンクの運用は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは歯髄MSCが肝細胞類似細胞に分化し、これが肝細胞特異的な機能であるアルブミン合成や尿素サイクルの機能によるアンモニアの分解機能を有することを示した。また肝細胞特異的転写因子HNF-4の発現を認めたことより、歯髄から肝臓への道筋を作ることができたと考えている。 本研究は申請者らの歯髄からの肝細胞分化というこれまでの研究成果を、運用されている歯髄細胞バンクの土台で、実際の臨床応用に結び付けられないかという観点から研究の着想に至ったものである。肝臓は代謝の中心臓器であり、チトクロームP450などによって、薬物代謝の中心を担っている。一方で薬剤性肝障害は頻度の高い疾患であり、時に重症化することがあり問題である。医学の進歩によって将来、夥しい数の分子標的薬などの新規薬剤が市場に出回ることが想定される。その際、その薬剤が個々人にあった薬剤であり、副作用なく使用できるかを事前に予測することが極めて重要である。 歯髄細胞バンクで保存した細胞を、必要時に肝細胞に分化させ、今後更に進歩すると考えられる癌などの分子標的薬投与が未来必要となった時の薬剤毒性検査に使用できないかというのが本研究の目的である。今後は分担研究者の石川と連携を密にし、ビーズ法などを取り入れた3次元培養法を進展させ、本研究の主題の1つである個人の歯髄MSC由来肝細胞を用いた、薬物毒性スクリーニング方法の確立の実験を進めていく。また重症肝炎モデルへの細胞移入療法に関しては、現在移入した人の細胞をラットの肝組織から定量的に検出する定量PCR系の確立を行っており、これをさらに進めていく。
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Causes of Carryover |
研究分担者の松田が30年度分担金を使用しなかったため、最終年度の分担金とあわせ消耗品を購入予定であるため。
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Research Products
(2 results)