2017 Fiscal Year Research-status Report
血中小粒子高比重LDL(sdLDL)生成におけるリパーゼの役割
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17K08974
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
木村 孝穂 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90396656)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 動脈硬化症 / LPL / HTGL / レムナント / sdLDL / 冠動脈疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮にはカイロミクロン、VLDLおよびLDL代謝に必須であるLPLやHTGLが結合しているがこれらのリパーゼとリポ蛋白生成の制御機構は明らかでない。本研究ではヘパリン投与によりLPLおよびHTGLが血管内皮細胞から血中に遊離した後の血中sdLDL、LPL、HTGLおよびRLP-C濃度の変動を調べることで血中でのsdLDL生成の制御系を解明し、冠動脈疾患とsdLDL、レムナント、LPLおよびHTGLとの関連を明らかにすることを通じてこれまで我々が提唱してきた「コレステロール逆輸送と独立した血管内皮機能調節による抗動脈硬化作用」を発展させ、血管内皮機能と関連した動脈硬化症発症メカニズムの一つとして「リパーゼによるsdLDL生成制御系の解明」を目指している。平成29年度は研究対象者100名の検体採取を終了した。これらの検体の血中sdLDL、RLP-C、LPLおよびHTGLの測定を終了した。LPLとHTGL濃度はともにヘパリン投与15分後に上昇し、4時間後にヘパリン投与前の濃度に低下した。ヘパリン投与前と15分後のLPL、HTGL濃度の間にはそれぞれ正の相関を認めた。一方でRLP-C、sdLDL-C濃度はともにヘパリン投与15分後に低下し、4時間後にヘパリン投与前の濃度に戻った。LPL濃度はRLP-C、sdLDL-C濃度と逆相関、HDL-C濃度と正の相関を示し、HTGL濃度とRLP-C、sdLDL-C濃度と間に正の相関を認めた。心臓カテーテル検査の結果、67症例が冠動脈疾患(CAD)と診断された。対象症例から糖尿病、維持透析症例を除いた53症例(非CAD24例、CAD29例)で検討した結果、ヘパリン投与前後のHTGL濃度比(post-/pre-heparin ratio)がCAD群で有意に高値を示した。これらの結果を学会で報告し、論文発表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り100名の研究協力者から採血を行い、血液サンプルを採取した。採取したサンプルにおけるRLP-C、LPL、HTGLおよびsdLDLの測定を実施した。sdLDL測定では感度以下の濃度の検体が多数認められた。これらの検体をチェックするとフィブリンが多く析出していた。フィブリンが測定に影響している可能性が高いと考え、遠心処理を行い上清中の濃度を測定すると問題なくsdLDL濃度を測定することができた。このように測定系の問題が新たに発見されたが、遠心処理で測定が可能になることを見出し、問題解決につながった。他の測定項目は問題なく測定できた。従って当初の研究協力者100名の目標を達成できたこと、また予定していた脂質ならびにリパーゼの測定項目が予定通り測定できたこと、更に29年度中に得られた成果を学会で報告し、論文発表している。これらの3点から本研究の初年度の評価はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では29年度と30年度の2年間で200例の研究協力者の登録を目指している。今後も研究協力者の確保に努め、症例数の増加を目指していく。また、測定結果の詳細な解析のために患者情報の採取と解析を進めていく。研究協力者として想定してい対象群は冠動脈疾患の存在が疑われるため既に降圧薬やスタチンなどの脂質代謝を改善する薬を内服しているものが多いため研究協力者の背景を詳細に解析することが必須と考え、患者情報を詳細に収集し検討を進めている。
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