2018 Fiscal Year Research-status Report
脂質代謝と肝樹状細胞を組合せた自己免疫性肝炎の早期診断法の開発
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17K08977
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
富山 智香子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80359702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾関 百合子 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00169301)
佐藤 英世 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60235380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己免疫性肝炎 / 卵巣摘出 / 肝臓 / pDC / cDC |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis: AIH)は、50代以降の女性に多く発症する慢性肝炎であると共に、近年、男性患者や重症患者の増加がみられるようになってきた。そのため、AIHの発症・病態進展要因には性差だけでなく複合的な因子が考えられる。そこで、我々は昨年度マウスに卵巣摘出術(ovariectomy; OVX)を行い、低エストロゲン状態がAIH肝障害とDCへ与える影響について検討を行った。その結果、OVXによりAIH肝障害は有意に増悪し、肝障害時の標的臓器である肝では、siglec-H+PDCA-1+B220+形質細胞様樹状細胞(plasamacytoid dendritic cells; pDC)の減少傾向、I-A+F4/80+通常型樹状細胞(conventional dendritic cells; cDCs)の有意な増加を認めたことを報告した。そこで、今年度も昨年に引き続き低エストロゲン状態で変化の見られたDC分画機能とDCによる刺激が影響するT細胞分画・機能について検討を行った。その結果、OVXしたマウスのAIH肝障害時の肝DCはTNF-αおよびIL-12産生量が増加した一方、IL-10産生減弱を認めた。また、肝臓のT細胞については、CD4+T細胞、CD8+T細胞共にOVXによりCD69発現が増強し、AIH肝障害時にはより加速した。さらに、血中のIFN-γ、TNF-α、およびIL-4産生量も増加した。以上のことから、AIH肝障害は低エストロゲン状態で増悪し、その免疫学的機序として1)pDCの減少と機能的減弱、2)cDCの増加とTNF-αによる直接的肝細胞障害の増強、3)活性化T細胞の増加による肝障害の増強が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目にあたる今年度は、低エストロゲン状態によるAIH肝障害増悪時のDCの機能的変化、ならびにDCの刺激によりeffector細胞として機能するT細胞の性状の2点について検討し、研究実績の概要通り一定の成果を得た。当初計画では、肝DCの脂質関連細胞死の分子生物学的解析を行う予定であったが取り掛かることができなかった。しかし、今年度の研究結果により低エストロゲン状態では肝pDCの減少よりもcDCの増加と活性化が顕著であった。このことから、脂質関連細胞死よりも脂質による活性化シグナルを検討する必要性が出てきたことが考えられた。そこで、共同研究者と相談し、脂質関連の細胞死と活性化シグナルを並行して行うことを計画している。また、低エストロゲン状態におけるAIH肝障害のDC分画、機能解析がおおむね終了しているため、上記実験と共に他の脂質代謝異常マウスのDC分画解析、並びに脂質関連細胞死および脂質関連活性化シグナルについて分子生物学的解析を行い、さらなる研究推進を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、低エストロゲン状態でのDCにおける脂質関連細胞死について分子生物学的解析を行い、AIH肝障害との相関性について追究する。また、今年の成果から導き出された結果から脂質関連活性化シグナル解析を行うこととなった点が当初計画との変更点であるが、この点が明らになることでAIHの複合的発症要因が解明される可能性が高まることが考えられる。さらに、エストロゲン非依存性の脂質代謝異常マウスについては、先天的代謝異常マウスに比して高コレステロール飼料食餌マウスの方がDCへの影響が大きいことが予備研究で明らかとなったため、後者を用いてAIH肝障害への影響をDC解析により明らかにしていく。低エストロゲン状態におけるAIH肝障害とDCとの関連性については一定の成果を得たため、今後共同研究者と相談し論文化を進めていく。また、連携研究者と研究推進計画を話合い、より効率化を図り推進していく。
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Causes of Carryover |
今年度、肝DCの脂質関連細胞死の分子生物学的解析を行う予定であったが取り掛かることができなかったため次年度使用額に差が生じた。上記研究について既に共同研究者と計画しているため、順次実行していく。
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Research Products
(6 results)