2018 Fiscal Year Research-status Report
High-order mechanism for regulating immune function of macrophages using a new recombinant protein and its clinical application
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17K08999
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
池本 正生 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 客員教授 (80144385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 洋志 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (20362387)
岡田 光貴 京都橘大学, 健康科学部, 助教C (80747569)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / S100タンパク質 / NF-kappa B / 炎症性サイトカイン / 複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しいリコンビナントタンパク質であるhMIKO-1及びその誘導体(3種類)を大腸菌を用いて作製することに成功した.本タンパク質の免疫学的意義を明らかにするため,in vivo及びin vitroの実験を行った.in vivoの実験において,5% DSS誘導UCラットの腹腔内にhMIKO-1を0.6 mg/day/ratの割合で毎日投与した群(M群)と陽性コントロール群(D群)のラットと比較検討した.その結果,D群ラットの大腸から多量の出血を認め,大腸,とくに直腸の粘膜上皮は脱落し,瘢痕化していた.それに対して,M群ラットからの出血はほとんど認められず,炎症性変化や瘢痕化はほとんど観察されなかった.一方,in vitroの実験においてラット腹腔マクロファージにhMIKO-1を作用させたところ,hMIKO-1はマクロファージに迅速に結合し細胞質内に取り込まれること,次に細胞質を経由して核内に移行することをWestern blotting及び蛍光免疫染色法により確認した.さらに,hMIKO-1は細胞質内及び核内において少なくともNF-kappa Bと複合体を形成することを初めて明らかにした.なお,hMIKO-1誘導体,とくにhMIKO-1cがNF-kappa Bとより強く複合体を形成した.このように,hMIKO-1は多くの炎症誘導経路のうちNF-kappa Bを介する情報伝達経路を阻害することにより,マクロファージの過剰な活性化を抑制すると考えられた.現在,hMIKO-1が炎症抑制作用を有している可能性が強く示唆されるが,その誘導体は免疫学的にhMIKO-1より強い効果を発揮する可能性があり,将来的には,厚生労働省指定の難病である潰瘍性大腸炎を代表とする炎症性腸疾患の予防薬もしくは治療薬として期待出来る.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度までは,ラットS100タンパク質をモチーフとして開発したrMIKO-1の免疫学的意義について検討し,ラット腹腔マクロファージの異常活性化を抑制する事実を発見した.将来的には,ヒトへの応用を考えている.そこで2018年度は,リコンビナントヒトMIKO-1(hMIKO-1)を考案し,大腸菌を用いてその作製に成功した.そこで,新しく作製したhMIKO-1がrMIKO-1と同様の結果を示すかどうかを検討したところ,in vivo及びin vitroの実験において,hMIKO-1もrMIKO-1とほぼ同様の免疫学的機能を有していることが判明した.すなわち,hMIKO-1を5% DSS誘導UCラットに毎日腹腔内投与したところ,明らかにUCの発症を抑制していた.この結果から,hMIKO-1のアミノ酸配列に注目し,遺伝子組換え技術を用いてhMIKO-1の誘導体を作製した.現在,hMIKO-1及びその誘導体がラット腹腔マクロファージに取り込まれ,細胞質を経由して核内に移動すること,さらにNF-kappa Bと複合体を形成することまで明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から,hMIKO-1及びその誘導体はヒトの潰瘍性大腸炎の予防薬もしくは治療薬としての可能性のあることが明らかになった.2019年度は,これらの作用機序をラット腹腔マクロファージを用いてin vivo及びin vitroの系で明らかにし,これら誘導体のマクロファージ機能制御性因子としての意義を検討し,将来的には潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患の予防薬もしくは治療薬として有用性を治験において検証することを試みる.一方,hMIKO-1及びその誘導体はdelivativeとしての機能を有すると考えられることから,本タンパク質のN末端もしくはC末端に抗がん剤などを結合させることによりピンポイント的にがん細胞,とくに骨髄性単球性白血病細胞に作用させ,その有効性を探る.一般的に,抗がん剤などの化学物質は正常な細胞をも破壊することから副作用があり,問題になることが多い.本タンパク質は目的の異常な単球性白血病細胞に選択的に作用すること,さらに細胞を死滅させることなく,限りなく正常な状態に近づける可能性のあることを特徴とする.したがって,副作用の軽減が十分期待できる.このように,hMIKO-1タンパク質の免疫学的意義の検証と,その応用について検討する予定である.
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Causes of Carryover |
払戻金があったため.次年度はこの額を含めて使用する.
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