2017 Fiscal Year Research-status Report
新しい急性心不全治療戦略構築への基盤的研究-利尿薬反応性とバイオマーカーの応用-
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17K09002
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
吉原 史樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (70393220)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 利尿薬反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究計画に基づきフロセミドの静脈内投与を受けた急性心不全患者を対象として以下の検討を実施した。 急性腎障害(AKI)の定義:AKIは48時間以内に血清クレアチニン値が0.3mg / dlまたは1.5倍増加と定義した。利尿薬反応性:利尿薬反応性の定義は、入院後5日間の体重減少/[(静脈内投与量)/40mg]+[(経口投与量)/80mg]フロセミドとした。 研究デザイン:研究デザインは後ろ向きの観察研究。患者をAKIの発症の有無および利尿薬反応性の高低によって4つの群に分類(①AKI無/低利尿薬反応、②AKI無/高利尿薬反応、③AKI有/低利尿薬反応、④AKI有/高利尿薬反応)した。エンドポイントは全死亡とし、利尿薬反応性がAKIの生命予後悪化リスクを階層化するかどうかを評価した。 統計分析:生存率の評価は、Kaplan-Meier分析を用いて実施し、有意差はlog-rank検定を用いて分析した。生命予後の関連因子は、単変量および多変量Cox比例ハザード分析を用いて評価した。さらに、AKI有+低利尿薬反応群に関連する因子を単変量および多変量解析を用いて評価した。 結果 AKIと利尿薬反応性:Kaplan-Meier生存分析の結果、AKI有/低利尿薬反応の患者群の死亡率が有意に高値であった(log-rank検定、P <0.001)。Cox比例ハザード分析の結果、死亡リスクはAKI有/低利尿薬反応の患者群においてAKI有/高利尿薬反応の患者群と比較して有意に高値であった。AKI有/低利尿薬反応群の関連因子:尿素窒素高値および静脈内ドブタミン投与が、AKI有/低利尿反応の独立した関連因子であることが明らかとなった。 以上の結果より、急性心不全の重症度に応じてAKIの発症を伴う利尿薬低反応性を来し、生命予後悪化に繋がる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度研究計画は下記の2つを予定していた。(1)レジストリ研究 利尿薬反応性の定義:第1病日および第4病日の体重記録より体重減少量を算出。第1病日から第3病日までの利尿薬投与記録より投与量を算出。入院後4日間におけるフロセミド40 mgあたりの体重減少率(kg/40 mg furosemide)を利尿薬反応性と定義。本定義に基づき利尿薬反応性を算出する。(2)バイオマーカー研究 国立循環器病研究センターの倫理審査委員会へバイオマーカー研究の倫理審査申請を行い、症例エントリーを開始する。 (1)レジストリ研究に関しては利尿薬反応性の算出を終了し、平成30年度に実施予定であった解析も先取して終了した。この解析結果の概要は「研究実績の概要」に記載したとおりである。なお、利尿薬反応性の定義について、申請書作成の時点では第4病日までの体重記録を用いて体重減少量を算出するとしていたが、その後の文献検索において第5病日までのデータを用いた報告も確認された。そこで改めて定義に関して検討を加えた結果、第4病日あるいは第5病日までのいずれの結果にも対応可能とするために、入院5日間のデータ収集を行うこととし実施した。一方、(2)バイオマーカー研究の倫理審査申請は未実施である。その理由として、倫理審査委員会へ申請する試験計画書の作成に際し、(1)レジストリ研究の解析を先行させ、その結果に基づいた試験計画書作成がより良い結果をもたらす可能性が高いと判断し、先に述べたとおりレジストリ研究の解析を先に実施したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、(1)レジストリ研究の解析結果について英文医学雑誌上で公表すること、(2)バイオマーカー研究について国立循環器病研究センター倫理審査委員会へ研究計画書提出にて倫理審査を申請し、研究実施の承認を得て症例登録を開始することである。 バイオマーカー研究は、利尿薬反応性の三分位値によって3群に分類(低反応性群、中等度反応性群、高反応性群)し、尿中NGAL、KIM1、Clusterin、Osteopontin、Collagen IV、MCP-1、血中エリスロポエチン濃度、ヘモグロビン値および臨床所見(下記リスト)について比較する。3群間に有意差を認めた指標を独立変数として利尿薬反応性の独立規定因子を同定する。 臨床所見リスト:年齢、性別、病歴(急性心不全入院の既往)診察所見(身長、体重、BMI、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、NYHA分類、)、血液検査(動脈血液ガス分析、生化学検査、電解質、検血、)、尿検査、心エコー図検査所見(左心房径、左心室拡張末期径、左心室収縮末期径、心室中隔壁厚、左心室後壁厚、左心室駆出分画、Fractional shortening、下大静脈径、左心室流入E波Peak velocity、左心室流入A波Peak velocity、E/A比、E波減衰時間)、入院前治療薬剤(フロセミド、トラセミド、アゾセミド、スピロノラクトン、エプレレノン、サイアザイド、トルバプタン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、Ca拮抗薬、β遮断薬など)、入院後治療薬剤、薬剤投与量、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の使用有無、気管内挿管と人工呼吸器管理の有無、補助循環装置(大動脈バルーンパンピングIABP、経皮的心肺補助法PCPS)治療経過、臨床経過(急性腎障害の有無)
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Causes of Carryover |
現在の進捗状況にも記載したとおり、平成29年度研究計画は下記の2つを予定していた。(1)レジストリ研究および(2)バイオマーカー研究である。 (1)レジストリ研究に関しては利尿薬反応性の算出を終了し、平成30年度に実施予定であった解析も先取して終了した。一方、(2)バイオマーカー研究の倫理審査申請は未実施である。その理由として、倫理審査委員会へ申請する試験計画書の作成に際し、(1)レジストリ研究の解析を先行させ、その結果に基づいた試験計画書作成がより良い結果をもたらす可能性が高いと判断したためである。 平成30年度には(2)の実施を行うため、主に研究補助員の人件費、バイオマーカー測定費に助成金を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Impact of decreased serum albumin levels on acute kidney injury in patients with acute decompensated heart failure: a potential association of atrial natriuretic peptide.2017
Author(s)
Takaya Y, Yoshihara F, Yokoyama H, Kanzaki H, Kitakaze M, Goto Y, Anzai T, Yasuda S, Ogawa H, Kawano Y, Kangawa K.
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Journal Title
Heart Vessels
Volume: 32
Pages: 932-943
DOI
Peer Reviewed