2017 Fiscal Year Research-status Report
Clarifying the pathogenesis of hematological malignancies and development of diagnostic markers through analysing PU.1 target genes
Project/Area Number |
17K09019
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高橋 伸一郎 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (40375069)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PU.1 / メタロチオネイン / SIRPa |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)を代表とする造血器腫瘍の病態には、細胞分化異常及び増殖異常が重要な役割を果たしている。造血系マスター転写因子PU.1は、その発現低下によりAMLや骨髄異形成症候群(MDS)等の造血器腫瘍発症に中心的に係ることが判明している。研究代表者のグループはこれまで独自に、PU.1発現低下に伴うメタロチオネイン(MT)遺伝子の発現上昇(Imoto et al., 2010 JBC)と、Signal regulatory protein alfa(SIRP a)の発現低下を明らかにしている(Iseki et al., 2012 IJMM)。MTは細胞内金属イオンの上昇、ストレス等で発現が著明に増加する因子だが、顆粒球系細胞における役割は明らかになっていなかった。そこで、MT遺伝子を導入し作製したNB4(急性前骨髄球性白血病) MT過剰発現細胞を用いて、各種分化関連遺伝子の発現解析、好中球殺菌能評価による機能評価、形態学的検討、細胞周期解析等、様々な角度から検証を行った。その結果、これら全てに異常が起こり、MTが、全トランス型レチノイン酸(ATRA)の分化誘導効果を著しく阻害するということを見出した(Hirako et al., 2014 PLOS ONE)。そこで、MTやSIRPaの機能解析を通じて造血器腫瘍のさらなる分子病態の解明を目指すことを本研究の目的とした。平成29年度は、MTの単球系細胞分化における影響を検討したところ、これまで明らかにしている顆粒球系細胞分化とは異なり、明らかな分化への影響は確認できなかった(高渕ら、日本検査血液学会東北支部総会、2017年5月)。また、SIRP a低下細胞は低血清培養下で増殖異常を引き起こすことが明らかになった(高渕ら、日本検査血液学会東北支部総会、2018年6月発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、MTの単球系細胞分化における影響を検討したところ、これまで明らかにしている顆粒球系細胞分化とは異なり、明らかな分化への影響は確認できなかった。また、SIRP a低下細胞は低血清培養下で増殖異常を引き起こすことが明らかになった。以上より、これら2つの分子機能解析については進行中であり、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者のグループはこれまでに、PU.1標的遺伝子としてAML病態に深く関わる遺伝子を明らかにしてきた。そのなかでも、PU.1発現低下に伴い、発現が上昇する遺伝子としてPU.1を同定した(Inomata M et al., Leuk Res. 2006 Jun;30(6):659-64)。現在、AMLの新たな分子標的治療としてFLT3阻害剤 MidostaurinがFDAで認可され、昨年、その臨床研究の成果が報告された(Stone RM et al.,N Engl J Med. 2017 Aug 3;377(5):454-464)。そこで今後は、本研究課題「PU.1標的遺伝子群機能解析による造血器腫瘍病態解明と検査マーカーの開発」を発展させるために、MTやSIRPaのみならず、AML病態に深く関わるFLT3受容体下流シグナルに関しても解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
医学部教育研究棟の竣工が平成30年3月であり、それまでに十分な研究環境がなかったため、若干の使用の遅れが生じた。
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