2018 Fiscal Year Research-status Report
院内感染対策を目的とする薬剤耐性菌の抗菌薬耐性機構の解析
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17K09021
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
福地 邦彦 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (70181287)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インテグロン / 多剤耐性緑膿菌 / リネゾリド耐性 / 腸球菌 / ESBL / MRSA / SCCmec / PVL |
Outline of Annual Research Achievements |
院内アウトブレイクした多剤耐性緑膿菌2株の耐性遺伝子クローニングを完了し、blaIMP7, aacA4, aadA2 geneをコードするclass1 インテグロンを証明した。2株から得られたインテグロンの上流構造は一部が異なっていた。塩基配列解析の結果、上流にInsertion Sequenceを証明し、ISPa76としてISfinderに登録した。クローニングした全体の配列はLC091209 5793 bpとLC091210 6752bpとしてGenBankに登録した。この2株は異なるPFGE型であった。またMLST解析の結果、2株とも世界流行株のST235であった。これら2株は異なる伝播経路をたどったが、耐性遺伝子獲得は近い場面で起きたことが推察された。 リネゾリド耐性腸球菌の耐性遺伝子解析を行い、プラスミド上にoptrAとfexA geneを検出した(LC371257)。この2つの遺伝子はこれまでに報告されたpE349と共通であったが、これを挟む領域はTn544の一部であり、組み換えが起きたことが示唆された。リネゾリド耐性については、かつて当院で黄色ブドウ球菌においてリネゾリド投与後に23S rRNA遺伝子変異株の出現を見た。今回、リネゾリド耐性において、遺伝子変異と耐性遺伝子獲得の2種の機構が臨床実地で発生していることを明らかとした。 外来患者由来の第3世代セファロスポリン耐性大腸菌の耐性機構解析を継続していたところ、CTX M8型のESBL geneを同定した。これまで、CTX M3, M14がほとんどであったが、比較的稀な型を検出したため、耐性菌疫学の基本データとして報告した。 2009年から2017年までに当院で外来患者から分離された市中感染型のMRSA 342株のうち、Panton Valentine Leukocidin (PVL)陽性46株のmecA gene構造を報告した。CA-MRSA中のPVL陽性率13.5%は欧米諸国と比べ低率であった。SCCmec構造ではIV型が33株で最多で、次いでV型 5株 VII型 4株、不明4株であった。SCC mec構造には多様な組み換えがあり、SCCmec型同定時の課題も提示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回の科研費(C)24590708から継続してきた耐性遺伝子解析が複数完了し報告することができた。多剤耐性緑膿菌から、昭和大学病院ではこれまでに検出されなかったblaIMP7が同定でき、他のカルバペネム耐性緑膿菌分離株の耐性機構解析にも利用することが可能となった。カルバペネム耐性緑膿菌の耐性機構は施設により報告は異なるが、本院では約半数がメタロβラクタマーゼであり、そのうち責任遺伝子が不明なものが年間に数株ある。メタロβラクタマーゼはプラスミドを介して伝達することも知られており、詳細な疫学解析が望まれる。 リネゾリドはMRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に有効な抗菌薬であり、本薬物への耐性獲得は臨床上の重大な問題となる。中でも、耐性遺伝子がプラスミドなどに乗り、伝達可能な場合は耐性菌拡大の対策が一段と困難になる。今回、世界中の数か所で報告されたoptrA遺伝子がリネゾリド耐性腸球菌で検出されたことは、我が国に本耐性遺伝子が侵入したことを意味する。今後、リネゾリド耐性菌の分子疫学解析の基本となるデータを報告することができた。 2010年から継続してきた外来患者由来のESBL産生大腸菌の耐性遺伝子解析は既に44株を越えたところであるが、最も一般的なCTX M3,14以外にもM8やM55などが同定された。市中に種々なESBL産生菌が侵淫していることが示唆された。 PVL陽性のCA-MRSAのSCCmec構造の解析を実施し、SCCmecIV型が多数であることを示した。この事実は他の施設で報告された傾向と一致したが、一方でSCCmec構造の多様性が明らかとなり、今後の疫学解析を実施する上での課題を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も抗菌薬耐性菌の耐性機構解析を継続する。院内でのアウトブレイクが起きた際は当該菌種が最優先課題となるが、原則として、MRSA、MDRP、MDRA、CREのすべてを解析対象とする。耐性機構解析を含む分子疫学解析には①耐性遺伝子の検出 ②パルスフィールド電気泳動 ③POT解析 ④MLST解析を利用する。 前回の科研費(C)24590708から現在まで解析を続けている中、耐性機構が明らかとなっていない耐性株、特にメタロβラクタマーゼ産生がSMAテスト(メルカプト酢酸抑制試験)により示唆されているものであっても耐性遺伝子が同定されていない株がある。これらの耐性遺伝子の同定は行うべきとしている。 また、カルバペネム耐性であってもSMAテスト陰性株の耐性機構解析も次の課題とする。 市中への拡大が示唆されるESBL産生菌の追跡は続けるとともに、これまでに分離されたESBL産生大腸菌の病原性に関わる遺伝子の解析も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
実験計画の進行を妨げないレベルで、厳格な節約に努めた。本実験計画で使用する試薬の一つ一つは専用試薬であるため極めて高価である。希釈可能な試薬は可能な限り希釈して使用し、ディスポ―ザル器具は再処理して使用した。その結果、実験はおおむね順調に進めることができた。次年度以降も、使用する物品は同様なものであるため、実験回数の増加を目指す。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 昭和大学におけるMycobacterium abscessus complexの検出状況およびerm(41)解析2018
Author(s)
関口 綾香, 山口 史博, 船木 俊孝, 清水 翔平, 張 秀一, 藤嶋 彬, 刑部 優希, 井上 大輔, 柿内 佑介, 山崎 洋平, 楯野 英胤, 加藤 栄助, 若林 綾, 林 誠, 渡部 良雄, 横江 琢也, 松倉 聡, 鹿間 裕介, 福地 邦彦
Organizer
日本呼吸器学会
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