2017 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of cleavage fragments produced by proteolysis on cancer cell membrane
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17K09027
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Research Institution | Kanagawa Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
越川 直彦 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 部長 (70334282)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオマーカー / プロセシング / MT1-MMP |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌に特異的な血液腫瘍マーカーはなく、既存の腫瘍マーカーと画像診断に頼らざるを得ない。多くの患者は何らかの症状が出てから受診のため、診断確定時の約4割の患者が遠隔転移をもつ末期癌である。そのため、難治癌の治療成績の向上は、検診、人間ドックで早期に発見することが必須となる。 そのため、難治癌をいち早く診断できるバイオマーカーがゲノム、蛋白質、糖鎖、代謝産物を標的とした大規模オミックス研究が探索されているが、これまでに十分な成果が得られていない。これらオミックス解析は癌患者と健常人でのバイオマーカーの候補分子の発現量に対するS/N比を元に選抜するため、健常人でも若干の発現が見られる。この特異性の甘さが診断精度の検証において感度や特異度を低下させている原因となっている。そのため、癌でのみ発現するバイオマーカーを見出すことは喫緊の課題である。 研究代表者は、悪性化形質の動力源となる膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1(MT1-MMP)の研究分野を先導している。先行研究において、細胞膜上で特異的に発現しているMT1-MMPがその基質となる膜蛋白質を限定分解することで、膜蛋白質の機能制御に寄与していることを見出している。これまでにMT1-MMP基質のプロセシング断片に着目した系統的な研究はないことから、本研究で計画している膵癌細胞が産生するMT1-MMPプロセシングが産生する基質断片のdegradome解析は、膵癌への高い特異性をもつバイオマーカー候補を見出す可能性が高い。また、先行研究で見出した2種のシグナル分子断片は複数のがん種で発現特異性を確認済であり、アドバンテージを持って研究を進めることが出来る。以上より、本研究は、癌に特異性の高いバイオマーカーを同定し、膵癌等の難治がんの早期診断を可能とする血液診断法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.MT1-MMPによるプロテオリシスを受け遊離する膜蛋白質を同定するため、ヒト・膵がんPanc-1細胞に発現するMT1-MMPをノックダウンした細胞を作製した。ノックダウン細胞のMT1-MMP発現はライゼートによるウエスタンブロットでは検出できない程度であった。次に、ビオチン標識した野生型とノックダウン細胞の50倍に濃縮した培養液(CM)に含まれる蛋白質をウエスタンブロット後、アビジンにて遊離した膜蛋白質断片を検出したが、CMの遊離断片の蛋白質バンドの明確な異同が見られていない。今後、培養液の採取する条件、濃縮法等の検討を行う予定である。
2.MT1-MMPによる膜上でのプロセシングで遊離するEphA2断片に対する特異抗体を作製するため、断片をスリースタイル293細胞のシステムを用いて天然型のEphA2遊離断片を作製した。3種類のモノクローナル抗体を樹立することに成功し、それらを抗体の性状を検討したところ、76A1抗体はMT1-MMP依存的に産生されるEphA2遊離断片のみに反応した。そこで、76A1を捕捉抗体として、非切断型(野生型)と遊離断片に反応する46A1を検出抗体としたELISAを構築し、10~250 pg/mLのEphA2断片を定量する測定系を確立することに成功した。予備的に、種々のがん患者血清を購入し、それらに含まれるEphA2断片を測定した結果、本解析に用いた膵がん血清の約90%でEphA2遊離断片が健常人のそれよりも高値を示した。以上から、EphA2断片は新たな膵がんのバイオマーカーとなる可能性をもつことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.MT1-MMPプロセシングで遊離する新たな膜蛋白質遊離断片の解析は材料となる細胞、MT1-MMP発現量、遊離断片の採取法と解析法などの基礎的な検討を行う必要がある。MT1-MMPのプロセシングで遊離する新たな膜蛋白質断片の解析は以下の内容を考慮して進める。まず、遊離断片を効率的に同定するためには、その産生量の多い細胞を用いることが必要となる。そのため、膵がん細胞にこだわらず、MT1-MMPによる膜蛋白質のプロセシング断片の産生を比較し、適した細胞を用いることを検討する。また、現在、MT1-MMPをその高発現細胞からノックダウン法を用いているが、MT1-MMP非発現細胞にMT1-MMP発現ベクターを導入したMT1-MMP安定発現細胞を用いることも視野に入れる。
2.EphA2遊離断片が新たな難治性がんのバイオマーカーとなる可能性をさらに検証するため、病院等で得られる信頼性の高い血清検体を用いた解析が必須となる。そのため、研究申請を本機関の倫理委員会等へ行い、研究体制を整えた後に進める予定である。
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Causes of Carryover |
膵がん細胞の産生するプロセシング断片が見出すことができず、質量分析計を用いた同定までに至らなかった。本年度に到達できなかった研究課題については次年度へ繰り越すことで対応するため、その経費を繰越金とした。
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Research Products
(11 results)