2019 Fiscal Year Research-status Report
機能性胃腸症における胃の痛覚過敏へのCRF2を介したインターロイキン6の関与
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17K09031
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
尾崎 紀之 金沢大学, 医学系, 教授 (40244371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 洋明 金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サイトカイン / IL-6 / 内臓痛 / 胃痛 / CRF / ストレス / 免疫組織化学 / 中和抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はラットにwater avoidance stressを毎日2時間、10日間加えると胃の痛覚が亢進し、この痛覚亢進には副腎皮質刺激ホルモン放出因子(corticotropin-releasing factor, CRF)の受容体のうちCRF2が関与していることを報告してきた。そのメカニズムを明らかにするため、以下の項目について調べた。 1.ストレスによる胃の痛覚過敏への炎症性サイトカインIL-6拮抗薬の効果と、IL-6の胃の痛覚への効果 炎症性サイトカインIL-6に対する中和抗体を投与したときの、ストレスによる胃の痛覚亢進への効果を調べた。ストレスを加え、胃の痛覚が亢進したときに、IL-6に対する中和抗体を投与すると、ストレスで亢進した胃の痛覚が抑制された。つぎに、無処置の動物にIL-6を投与したところ、内臓運動反射が亢進し、IL-6は胃の痛覚を亢進することがわかった。
2. CRFおよびその受容体の胃粘膜での発現局在についての免疫多重染色による定量的解析 CRFファミリーであるCRF、urocortin1 (Ucn1)、Ucn2および、受容体であるCRF2の発現を免疫組織学的に調べて定量的に評価した。CRFは固有胃腺の腺細胞に、Ucn1およびUcn2は粘膜固有層深部の結合組織細胞に、CRF2は粘膜固有層深部の結合組織細胞と、固有胃腺の腺細胞に発現し、Ucn2とCRF2は、一部の肥満細胞と、その他の結合組織細胞に発現していた。ストレスを加えると、CRF2陽性細胞が有意に増加していた。一方、CRF、 Ucn1、Ucn2、肥満細胞の数に変化はなかった。ストレスを加えても、肥満細胞におけるUcn2陽性細胞の数に変化はなかった。このことから、ストレスを加えると、CRF2陽性細胞は増えるが、それは、肥満細胞ではなく、それ以外の結合組織性の細胞で増えていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IL-6の胃粘膜で発現を免疫組織学的に同定することを試みているが、これまでの実験ではうまく染まっておらず、同定ができていない。抗体の問題、組織の固定条件等を検討している。western blottingによるIL-6の量的な検討を行ったり、in situ hybridizationに変更したりすることも検討する。 また、IL-6を投与すると胃の痛覚が亢進したが、一部の動物では、IL-6投与後に非特異的な活発な行動が見られ、それが、胃の痛覚亢進によるものか、他の要因によるものか、確認が必要と考えている。 また、ストレスによる胃の痛覚にCRF2が関与し、胃粘膜でCRF2陽性細胞の増加が見られたが、増加していたCRF2陽性細胞は想定していた肥満細胞ではなかったので、大食細胞など他の結合組織性の細胞の検索も進める必要が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-6の胃粘膜での発現を免疫組織学的に同定する研究については、抗体、組織の固定条件等の検討を進め、免疫組織学が上手くいかない場合は、westernblottingによるIL-6の量的な検討を行ったり、in situ hybridizationに変更したりすることを検討する。 ストレスを加えると、肥満細胞以外の結合組織細胞でのCRF2の発現が増加することが明らかになった。ストレスによる結腸での痛覚の亢進では、肥満細胞の関与が報告されており、胃と腸の痛覚亢進のメカニズムの違いとして興味深いと考えている。肥満細胞以外の候補として大食細胞などでのCRF2の発現と、ストレスによる変化を調べる。 その他は、当初の研究計画に沿って研究を進める。
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Causes of Carryover |
購入した抗体が染まらなかったため、継続購入を中止し、別の抗体を検討している。
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Research Products
(18 results)