2019 Fiscal Year Research-status Report
人工関節術後遷延痛モデルの確立と酸感知機構を標的とした治療法の開発
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17K09034
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
池内 昌彦 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00372730)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 術後遷延痛 / 人工関節 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、人工関節手術件数は飛躍的に増加し、術後遷延痛が大きな問題となっている。申請者は、人工関節術後遷延痛の発生機序を解明し、その治療法および予防法を確立することを目指している。本研究では、人工関節術後遷延痛の動物モデルを作成し、神経感作の関与を特に末梢神経酸感知機構に注目して調査することを計画した。当初の予定とは異なり、全く新しく動物用の人工関節を作製する必要があったため、人工関節モデル動物の作成に難渋し時間を要した。最終的に人工関節動物モデルとして、ラット大腿骨頭置換モデルの作成に成功した。本モデルでは、行動学的に術後痛を2週間認めるが、その後回復し歩行機能も正常化することを確認した。これは臨床の人工関節術後経過に類似したものである。術後遷延痛モデルとして、炎症惹起物質を先行投与することを試みたが、思った通りの遷延痛には発展しなかった。そこで、神経障害によって術後痛を修飾することに予定を変更した。具体的には、ラット大腿骨頭置換モデルに坐骨神経部分結紮操作を加えることによって、4週間以上疼痛が遷延化する術後遷延痛モデルが完成した。現在、疼痛行動および歩行解析評価は終了し、データ解析を行った結果、シャム手術、大腿骨頭置換モデル、大腿骨頭置換+神経障害痛モデルの3群間に有意な差を認めた。さらに、本モデルにおいて脊髄および後根神経節に発現する疼痛関連分子の解析を免疫組織化学染色法によって行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
疼痛行動の評価に適したラットを用いたが、関節が非常に小さいためモデル作成に難渋したことが実験遅延の最大の理由である。当初、ラットの膝関節に臨床で使われているシリコン製人工指関節を挿入する予定であったが、人工関節の固定性に問題あり断念した。また、固定性を高めるために金属、セラミック製の人工関節も試みたが、関節の脱臼を来し術後の歩行解析が不可能であった。最終的に大腿骨頭置換モデルに予定変更して、課題を克服しモデルの作成に成功した。使用した人工関節は、ラット大腿骨近位部分を忠実に再現するため、3Dプリンタを用いて新しく作製した。また、初期固定性を高めるため骨セメントを使用することや、脱臼予防のために特別な手術アプローチを採用する工夫など、試行錯誤しながら本モデルを完成させた。本モデルを使った行動学的評価や疼痛関連分子の解析などは順調に行えていたが、新型コロナ感染症拡大の影響によって実験自体の継続を一時的に休止することを余儀なくされた。5月下旬から再開している。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル作成は既に完了し、新型コロナ感染症による影響も軽減したため、予定通り神経組織の疼痛関連分子の解析を進める予定である。具体的には、脊髄や後根神経節は既に手元にあるため、これらの標本を用いて免疫染色等の実験を行い、データ解析を行う。
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Causes of Carryover |
動物モデルの作成に時間を要し、行動評価や疼痛関連分子の解析が未だ十分に行えていないためである。抗体試薬、行動評価機器、データ解析に使用する予定である。
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