2018 Fiscal Year Research-status Report
変形性膝関節症の運動時痛に関連する機械刺激応答分子機構の意義の解明
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17K09041
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
池田 亮 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20439772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 関節運動時痛 / 変形性膝関節症 / メカノレセプター / 機械刺激性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
推定約2400万人以上とされる変形性膝関節症(膝OA)の主たる症状は、関節運動や荷重などの機械刺激によって惹起される複雑な侵害性疼痛である。安静を保つことで症状緩和が得られることもあるが、痛みの暴露が長期化すると、末梢から中枢にいたる痛み情報伝達神経ネットワーク内に可塑的変化が生じ、神経障害性疼痛が付随した複雑な慢性痛に発展し難知性となる。そこで膝OAの新たな治療法や評価法の開発に重要な慢性関節痛発症機序を明らかにするため、運動時痛に関連する機械刺激応答関連分子に注目した。 今年度は、昨年度までの動物モデルの行動および脊髄レベルでの標的分子の解析に加えて、より高位中枢である脳機構の運動時痛成立への関与を評価するため、脳内神経核レベルで可塑性を証明することが可能な9.4テスラの小動物用高磁場MRI装置を導入した。安定した脳画像の獲得を目指し、これまで使用していた動物モデルをSDラットからC57BL/6マウスへ変更して実験機器の調整と手技の獲得を試みている。マウスに変更後もMIAモデル群では対象群と比較して、経時的な関節炎の成立と足底の間接的機械刺激に対する疼痛閾値の低下を認めた。ヒトの日常生活に類似した荷重時痛を再現するため、行動パラメーターを自動計測可能なトレッドミル機器を用いて疼痛に伴う持久力低下や疲労を評価中である。 これまでに得た研究結果は、報告してきた機械刺激応答分子Piezo2の生物学的意義とともに考察し、関連する皮膚科学、整形外科学、疼痛学の分野で発表、論文執筆を行った。膝OAの機械性疼痛に関連する標的分子と神経核を同定するため、引き続き遺伝子および画像解析を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SDラットでより安定した疼痛行動評価が可能であったMIAモデルをもとに、運動時痛に関与する機械刺激応答分子の同定を試みた。最終評価後に摘出した膝関節を支配するL3およびL4DRGからホモジネートを作製し、TRPA1, TRPV1, Piezo1, Piezo2の4分子に注目してRT-PCRを行った。残念ながら標的分子を適切に評価するには摘出検体量が少なかったため、より効果的な判定を目標にプライマー調整を継続している。また、今後予定している遺伝子導入や慢性痛成立に不可欠な脳機構の可塑性を検討するためには、実験を遂行するうえでマウスがラットよりも適していると判断した。そこで、ラットと同様の方法を用いてMIAによる炎症性膝OAモデルを作製し、行動評価とDRG摘出を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
C57BL/6マウスで同様の安定した動物モデル作製を確立した。摘出するDRG量を増やし、引き続き機械刺激応答関連蛋白の発現量に与える影響を検討する。また、機械性疼痛の長期暴露によって導かれる中枢神経系の可塑的変化を、機能的MRIによる脳機能画像計測で客観的に評価、解析することを予定している。
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Causes of Carryover |
昨年度導入を予定していたwheel running testでは行動評価を適切に行うことが困難であったため、膝OAの荷重時痛をより安定して再現し効率的に解析が可能なトレッドミル MK-690/RMを購入して検討を行った。想定していた購入価格がより安価に抑えられたため、本年度の使用額が計画よりも減少した。OAモデルから摘出したDRGに発現する機械刺激応答分子量の解析や今後予定している脳機能画像計測で必要になる消耗品機器を、次年度使用額を用いて購入予定である。
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Research Products
(5 results)