2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K09052
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
大岡 静衣 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (80313097)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 大輔 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (80450584)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | オピオイド要求性 / 炎症 / 免疫 / 痛み |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘパラン硫酸は炎症や免疫反応に関連することから、炎症や免疫反応を介した痛みにヘパラン硫酸が関与する可能性が考えられる。我々は、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛発症者のヒト遺伝子多型解析から、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)感染への関与が強く推定される、ヘパラン硫酸修飾酵素遺伝子の多型を見出した。このヘパラン硫酸修飾酵素は VZV との関連について報告がない。VZV は、ヒトに初回感染で水痘を引き起こし、三叉神経節等に生涯にわたり潜伏感染する。その後、免疫力低下等により VZV の再活性化が起こり、帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛を引き起こす。我々は、VZV 感染によりヘパラン硫酸修飾酵素発現細胞で細胞融合能が惹起されることを見出した。また、ヘパラン硫酸修飾酵素発現により VZV 増殖効率が低下することを明らかにした。これは、細胞融合により効率的な VZV 複製が妨げられるためである可能性が考えられる。VZV 感染ヘパラン硫酸修飾酵素発現培養細胞では、亢進した細胞融合能により、感染細胞周辺細胞まで融合してまとめて剥離することも明らかにした。この性質が神経細胞の異常興奮に繋がり痛みが生じる可能性が考えられる。あるいは、ヘパラン硫酸修飾酵素発現による細胞融合能の上昇でVZV複製量が低下することにより、VZV 感染伝播能力や潜伏感染量が低下し、VZV 再活性化・帯状疱疹罹患リスク低下につながる可能性も考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インターロイキン-17A (IL-17A) は、炎症性サイトカインやケモカインなどを誘導することで炎症を引き起し、自己免疫疾患や炎症性疾患、アレルギー反応、病原体感染防御において重要な役割を果たす。これまでの報告から、ヒトにおいて、免疫が報償系を介して痛みと関連することが明らかになっている。また、げっ歯類において、IL-17Aが神経炎症や神経痛に関与することも報告されていることから、ヒトでもIL-17Aが痛みに関連する可能性が高い。IL-17A遺伝子の一塩基多型 (SNP) であるrs2275913 は、これまでに喘息、リウマチ性関節炎、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、およびがんとの関連が報告されている。そこで、rs2275913 SNPについて、顎矯正手術前後の痛み関連表現型との関連を解析したところ、遺伝子型AAの患者で術中術後のオピオイド要求性が有意に上昇していたことから、AAの患者では、IL-17Aの機能が亢進し炎症が激化することにより、オピオイド要求性が上昇したと考えられる。これまで、ヒトにおいて、IL-17Aのrs2275913 SNPのAA遺伝子型は炎症を亢進させることも報告されている。したがって、ヒトにおいてIL-17Aは炎症系を活性化することにより、顎矯正手術後のオピオイド要求性に影響を及ぼす可能性が高い。 ヘパラン硫酸は炎症や免疫反応に関連することから、炎症や免疫反応を介した痛みにヘパラン硫酸が関与する可能性が考えられる。我々は、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛発症者のヒト遺伝子多型解析から、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)感染への関与が強く推定される、ヘパラン硫酸修飾酵素遺伝子の多型を見出し、VZV感染によりヘパラン硫酸修飾酵素発現細胞で細胞融合能が惹起されることを明らかにした。この性質が神経細胞の異常興奮に繋がり痛みが生じる可能性が考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ヘパラン硫酸修飾酵素とVZV感染、細胞融合能と痛みとの関連機構について解析を進める。
|
Causes of Carryover |
平成30年度末に行う予定だった実験が平成31年度に持ち越したため、それに必要な試薬等の購入も新年度にずれ込んだ。エレクトロポレーション、フュージョンアッセイ、感染実験、細胞培養等に用いる、試薬、プラスチック器具購入に充てる。
|
Remarks |
http://www.igakuken.or.jp/abuse/
|