2019 Fiscal Year Research-status Report
放射線治療のための3次元色素ゲル線量計の開発と応用に関する研究
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17K09072
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
林 慎一郎 広島国際大学, 保健医療学部, 准教授 (20238108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高梨 宇宙 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (40646692)
川村 拓 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 客員研究員 (80424050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゲル線量計 / ラジオクロミック / 放射線治療 / Optical CT / ポリビニルアルコール / ヨウ素 / 再利用 / 医学物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度も引き続き前年度までに見いだされた有望な素材(ポリビニルアルコール-ヨウ素錯体)を用いた3次元色素ゲル線量計の最適化と改良、および光学CTの開発改良を行ってきた。 本系の基本組成は部分ケン化型ポリビニルアルコール(PVA)とヨウ化カリウム(KI)、還元剤としてフルクトースを含み、線量感度・線量率非依存性・加算性・再利用性など、多くの優れた特性を示す。 本年度はこの系に関して、スクロースなどを添加することによる経時安定性(自然発色の抑制)と透明度の改善(バックグラウンドの低減)を検討し、有望な結果を得た。また、これまでは物理架橋を利用したゲル化剤を用いていたが、PVAマトリクスを化学架橋により固化することによって熱安定性や透明度が大幅に改善された。更にその結果、線量感度も2-3倍向上させることができた。 これらの結果は、AAPM 2019 (7/14-18, San Antonio, TX, USA)、ICRR2019(8/25-29,Manchestar, UK)、SSD19(9/15-20, Hiroshima, Japan)、第15回中四国放射線医療技術フォーラム(9/21-22, 高知市)、HALCHEM IX (9/23-26, Perugia, Italy)等の国内外の学会、および数編の欧文誌にて報告された。 一方、光学CTの開発はやや難航している。初年度からの定量的読み取りに関する問題点を改善するため、昨年度も継続してゲル線量計のゲルマトリクスや容器によるプローブ光の散乱や屈折の問題などの問題点の洗いを中心に行ってきた。これらの結果はSSD19(9/15-20, Hiroshima, Japan)にて報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
色素(ラジオクロミック)ゲル線量計の開発に関しては概ね順調に進展しており、実用化へ向けた多くの知見が得られつつある。しかしながら光学CTの開発においては、昨年度より引き続きデータ読み取り・データ処理の方法に困難が見られ、問題点の絞り込みは進められたものの、共同研究者の職場異動などもあり、3次元読み取り・解析・評価まで進めなかった。従って総合的に見るとやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発してきたポリビニルアルコールーヨウ素(PVA-I)ラジオクロミックゲル線量計に関して、得られている結果から、更なる感度や透明度、時間・空間安定性などの改善が可能と考えられるので、新規組成の検討・探索、および最適化の他、それらに関する実験を引き続き行う。また、得られた組成を臨床応用に結びつける。更に、ポリビニルアルコールの種類や、他の高分子化合物とヨウ素の錯体を用いて異なる吸収波長のゲル線量計の開発も進めている。 一方で、光学CTの開発に関してもゲル化剤とプローブ波長の最適な組合せや、遅れているデータ読み取り手法、および3次元解析手法の構築を引き行う。 最終的には光学CTに最適化されたゲル線量計を用いて3次元線量分布評価のプロトコルを確立する。
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Causes of Carryover |
(理由)まずひとつは、有望な色素を探索するため多様な色素(-数万円/種)を購入する予定であったが、探索初期で見いだしたPVA-Iが比較的良い特性を持っていたため主にその特性評価に重点を置いた実験を行った事が上げられる。もうひとつは、3次元読み取り装置の開発・解析を担当する分担者2名が共に2018年度に続き、2019年度にも所属の移動があり、それに伴い装置及び開発環境の移設が必要となり、また設置場所確保等に時間がかかった。これらの理由により次年度使用額が発生した。 (使用計画)H31(R1)年度に購入できなかった、各種試薬や容器等の器具を購入する。また、光学CTの読み出しやデータ処理の特性評価法の確立を進め、対応した部品を購入し、装置の作製を加速する。
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