2017 Fiscal Year Research-status Report
脳腫瘍に対する化学療法併用放射線治療による高次脳機能障害の解析
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17K09073
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
高井 伸彦 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (70373389)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重粒子線治療 / 脳内毛細血管密度 / 記憶 / 放射線生物学的効果比 / 脳壊死 / 放射線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳腫瘍の重粒子線治療における問題点の1つとして、高次脳機能障害と関連する正常組織の脳壊死が挙げられるが、我々の研究グループでは、脳壊死に先行して生じる記憶学習障害には、脳の局所毛細血管密度の減少が生じることや、記憶に関係するアセチルコリン受容体と神経伝達物質の結合解離動体が変化していることを明らかにしてきた。またその内容は5th Radiation and Applications in Various Fields of Research (RAD2017)にて報告してきた。さらに重粒子線治療において、放射線感受性にグルタミン酸受容体が関与していることを明らかしてきた(RadProc.2017.06 )。放射線の中枢神経系への胎児影響解析では、記憶学習障害の程度をグループ化し、その障害機序を病理組織学的に解析した結果、学習障害と記憶に関与する海馬内の異所性灰白質が、神経情報伝達を阻害していることを明らかにし、その内容は、The 8th Annual Meeting of the International Society of Radiation Neurobiologyに招待講演として発表を行なった。 今後、脳腫瘍重粒子線治療動物モデルを利用して、新たに確立した脳の局所毛細血管密度の評価手法を、化学療法併用およびグルタミン酸受容体阻害剤の影響解析に適用し、放射線療法と化学療法併用における正常組織への影響を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに確立した脳の局所毛細血管密度の評価手法を用いて、正常組織への放射線(重粒子線)影響の解析が、早期に可能になったこと、また記憶に関与するアセチルコリン受容体と神経伝達物質の結合解離動体が変化していることを明らかにしてきたこと、さらに重粒子線の正常組織障害にグルタミン酸受容体阻害剤が効果的に作用することを明らかにした。(RadProc.2017.06 )
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Strategy for Future Research Activity |
放射線(重粒子線)照射による中枢神経系の影響解析において、照射数ヶ月の脳壊死や組織障害が比較的検出が容易であるが、早期の機能障害を明らかにすることは非常に難しい。 我々が新たに確立した脳の局所毛細血管密度の評価手法は、照射1週間後から被曝線量の推定に利用できる利点を有している。この手法を、放射線療法と化学療法併用における正常組織への影響を解析することで、どのようなタイプの化学療法剤が、正常組織障害を増悪するかを明らかにすることができると考えられる。また化学療法剤の全てが放射線療法との併用によって、正常組織障害を誘発するのであれば、我々が報告してきたグルタミン酸受容体阻害剤との併用を踏まえた治療方法の提案が可能になると考えている。
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