2018 Fiscal Year Research-status Report
ライフコースゲノム研究:健康推進と疾患予防に役立つゲノム情報活用に向けて
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17K09081
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
村松 正明 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50230008)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多因子疾患 / 疾患感受性 / コモンバリアント / レアバリアント / ポジェニックモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年はJG-SNP剖検例を用いて、アルコール代謝に関連するADH1B遺伝子及びニコチン代謝に関連するCYP2A6遺伝子の多型をTaqman法にて1300例解析した。両者ともハーディーワインバーグ平衡を満たした結果となっており、日本人の多型頻度に概ね合致した結果を得ている。現在、これらのタイピング結果を用いて飲酒や喫煙が老人性疾患の発症に関わる遺伝子・環境因子の交互作用の解析を進めている。アルコール代謝に関しては、先にタイピングを行なったALDH2多型も合わせて解析を行う。これと並行してJG-SNP剖検例を用いたエクソームチップの解析を各疾患・病理データを用いて継続した。今回はアルツハイマー病に関連する疾患バリアントの探索を試みた。ABCA7遺伝子はアルツハイマー病のリスク遺伝子としてGWASで繰り返し同定された脂質代謝関連遺伝子である。最近の研究ではABCA7遺伝子の未成熟停止コドンがアルツハイマー病のリスクとなることが報告された。そこでJG-SNP剖検例におけるABCA7遺伝子上の非同義SNPを網羅的に調べることにより、アリル頻度が0.23%でオッヅ比が6.8倍(p=0.01)のレアバリアントを発見した。Polyphenによる機能予測では重大な障害が予測された。今後、更に明らかにするためには、大きなサンプルサイズで相関を確認するとともに、アミノ酸置換による機能変化を実証する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CYP2A6遺伝子多型は挿入・欠失型の多型であり、Taqman法で安定したタイピング結果を得られるまでに条件出しの時間が掛かったが、予定症例数の解析は終了した。エクソームチップの探索的研究から、多因子疾患を形成する遺伝子リスクにおいて、ポリジェニックモデルに加えてレアバリアントの寄与の一端を見い出すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
ADH1B遺伝子及びCYP2A6遺伝子と飲酒及び喫煙の遺伝子・環境因子の交互作用が老人性疾患の発症に関わるかJG-SNP剖検例を用いて解析を進める。多因子疾患は多くの遺伝子と多くの環境因子が原因となって発症するが、遺伝子リスクに関しては多くの知見が集まっており、多遺伝子のコモンヴァリアントを考慮したポリジェニック・スコアが益々重要になって来ている。それと同時にレアバリアントも一部の患者には高いリスクを付与しているものと考えられ、この両方の視点から研究を遂行していく必要があると考えられた。
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