2017 Fiscal Year Research-status Report
肥大型心筋症および類縁疾患の発症・進展・予後に関する分子遺伝疫学的研究
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17K09082
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤野 陽 金沢大学, 保健学系, 准教授 (40361993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 研至 金沢大学, 附属病院, 助教 (00422642)
山岸 正和 金沢大学, 医学系, 教授 (70393238) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥大型心筋症 / 突然死 / 心筋線維化 / 収縮不全 / 心臓MRI / 遺伝子解析 / 次世代シークエンサー / 特発性心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥大型心筋症(HCM)は若年者突然死の原因として最も頻度が高い特発性心疾患であり、一部の症例は中年以降に心筋線維化と収縮不全をきたす。HCMの原因は心筋サルコメア蛋白遺伝子群の変異であり、原因遺伝子による臨床病型の違いが報告されている。最近、比較的簡便に実施可能な心臓MRIガドリニウム遅延造影法(LGE)により、HCMの本態である心筋線維化を捉えることが可能となった。平成29年度の目的のひとつは、LGEの定量的評価により遺伝子変異の存在が予測可能か否かを検証することであった。 金沢大学附属病院においてHCMと診断され、心臓MRIによる評価が行われた82名を対象とした。遺伝子解析は、次世代シークエンサーにより遺伝子パネルで実施した。心臓MRI所見の解析では、心筋短軸像の複数スライスにおいて正常心筋部位を基準とした場合の6 S.D.を超える輝度をもつ心筋部位をLGEとして定義した。LGE総面積をトレースにより求めた心筋総面積で除した値を%LGEと定義した。82例のHCM(男性57.3%、平均年齢55.4歳、平均最大心筋壁厚19.2mm)において、原因遺伝子変異が同定されたのは44例(54%)であった。LGEは60例(73.2%)に認められ、%LGEの平均値は9.9%であった。%LGEの上昇は、原因遺伝子変異の存在を有意に予測する独立した因子であった(オッズ比=2.12、95%CI=1.5-3.8、p<0.01)。%LGEの変異予測についてのROC解析ではAUC=0.96と高い精度を有し、カットオフ値=8.1%において、感度=93.2%、特異度=89.5%、陽性的中率=91.1%、陰性的中率91.9%であった。古典的な遺伝子変異予測ツールであるToronto scoreとの精度比較検定を行い、%LGEが従来法に比して有意に優れた変異予測法であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金沢大学医学倫理審査委員会にて承認(審査番号 584-3)された「北陸肥大型心筋症登録観察研究」の計画書・説明書に則り、肥大型心筋症(HCM)患者に対して研究内容・臨床病型追跡に関する説明を行い、書面での同意を取得した。同時に、金沢大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会にて承認(審査番号 313-5)された「遺伝性心血管疾患における集中的な遺伝子解析及び原因究明に関する研究」の計画書・説明書に則り、HCM患者に対して病因遺伝子解析に関する説明を行い、書面での同意を取得した。本研究は次世代シークエンスに対応済であり、全ゲノムを対象とした。 「北陸肥大型心筋症登録観察研究」では具体的に、患者情報に関しては個人情報分担管理者による連結匿名化を行った上で、登録日(西暦/月/日)、診断確定年、年齢(才)、生年・性別(男・女)、登録時の身長と体重、原因遺伝子が確定している場合には原因遺伝子、を記録した。臨床パラメーターとして、心エコー図指標:左房径(mm)、心室中隔厚(mm)、左室後壁厚(mm)、左室拡張末期径(mm)、左室収縮末期径(mm)、左室内径短縮率(%)、左室駆出率(%)、左室流出路圧較差(mmHg)、左室流入波形 (E/A) 、E/e’、を記録した。心臓MRI検査ではガドリニウム遅延造影法(LGE)を行い、心筋線維化を捉えた。予後・心血管イベントとして、生存/死亡、全入院、心不全による入院、心室細動、ICDの有無、およびICDの適切・不適切作動の有無、心房細動、心房細動に伴う脳梗塞の有無、について追跡調査を行った。 「おおむね順調に進展している」と判断した理由は、研究実績の概要で示した通り、古典的な遺伝子変異予測ツールであるToronto scoreとの精度比較検定を行い、%LGEが従来法に比して有意に優れた変異予測法であることを英語論文に報告できたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も肥大型心筋症例の全例登録を継続しつつ、臨床経過の追跡調査を行う。具体的には、1)自覚症状:NYHA、2)身体所見:収縮期・拡張期血圧・心拍数、3)臨床検査:BNP(またはNT-proBNP)・Hb・総ビリルビン・BUN・クレアチニン・尿酸・Na・K、4)心エコー:左室拡張末期径・左室収縮末期径・左室駆出率・心室中隔壁厚・左室後壁厚・左房径・左室流出路圧較差・心尖部肥大・僧帽弁逆流、5)心臓MRI検査:ガドリニウム遅延造影法(LGE)、核医学検査(任意検査)、6)薬物治療:ACE阻害薬・ARB・β遮断薬・ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬・アルドステロン拮抗薬・ジギタリス・Ca拮抗薬・I群抗不整脈薬・アミオダロン・ワーファリン、7)非薬物治療:PPM・ICD・CRT-P・CRT-D・PTSMA・外科的心筋切除術(施行時期も)、8)心血管イベント:(発症から登録時までの期間に生じたイベント)、心不全増悪による入院、心血管疾患による入院、致死性不整脈(持続性心室頻拍、心室細動)、ICD作動、心臓移植、9)原因遺伝子変異について、登録時に評価する。その後、全死亡、心血管死(心不全死、突然死、脳卒中死)、非心臓死、心不全増悪による入院、心血管疾患による入院、致死性不整脈(持続性心室頻拍、心室細動)、ICD作動、補助人工心臓、心臓移植の施行について、1年毎に追跡調査を継続する。 同時に、次世代シークエンスによる病因遺伝子変異の解析を継続する。既に肥大型心筋症大家系で施行したエクソーム解析の他に、Target re-sequencing(遺伝子パネル解析)を行い、既知の原因遺伝子の中に存在する原因遺伝子変異を検出する。
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Causes of Carryover |
購入を予定した消耗品の金額が本年度予算残額を超えていたため、次年度の予算と合わせて、購入することとした。 また、国内や海外で開催される学会にて研究成果の発表を行うための旅費、論文投稿に係る英文校正等の費用として支出する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Late Gadolinium Enhancement for Prediction of Mutation-Positive Hypertrophic Cardiomyopathy on the Basis of Panel-Wide Sequencing.2018
Author(s)
Teramoto R, Fujino N, Konno T, Nomura A, Nagata Y, Tsuda T, Tada H, Sakata K, Yamagishi M, Hayashi K, Kawashiri MA.
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Journal Title
Circ J.
Volume: 82
Pages: 1139-1148
DOI
Peer Reviewed / Open Access