2018 Fiscal Year Research-status Report
肥大型心筋症および類縁疾患の発症・進展・予後に関する分子遺伝疫学的研究
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17K09082
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤野 陽 金沢大学, 保健学系, 准教授 (40361993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 研至 金沢大学, 附属病院, 助教 (00422642)
山岸 正和 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (70393238) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥大型心筋症 / 突然死 / 特発性心疾患 / 左室拡張機能障害 / 左室収縮不全 / 非弁膜症性心房細動 / 血栓塞栓症 / 抗凝固療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥大型心筋症(HCM)は若年者突然死の原因として最も頻度が高い特発性心疾患であり、一部の症例は中年以降に左室収縮不全をきたす。またHCMでは左室拡張機能障害に伴う左房負荷も認められるため、非弁膜症性心房細動を合併する頻度も高く、それに起因する血栓塞栓症も臨床的には大きな課題である。欧州及び米国のガイドラインにおいては、非弁膜症性心房細動を合併したHCMに対しては抗凝固療法の施行が推奨されている。しかしながら本邦においては、HCMが非弁膜症性心房細動患者の血栓塞栓発症に与える影響について、未だ明らかにされていない。平成30年度の目的のひとつは、日本人非弁膜症性心房細動患者において、HCMの存在が血栓塞栓症発症に及ぼす影響について、検証することであった。 2,374例の日本人非弁膜症性心房細動患者(男性患者:1,682例、70.9%、平均年齢:71±10歳)について、後ろ向き観察研究を施行した。各種臨床的危険因子が血栓塞栓症発症に及ぼす影響を、Cox比例ハザードモデルに基づいて評価した。またHCMの合併をCHADS2スコアおよびCHA2DS2-VAScスコアに上乗せすることにより、血栓塞栓症の発症予測が改善するかどうかも検証した。2.4年の観察期間において、2,374例中122例に血栓塞栓症発症が認められた。Cox比例ハザードモデルに基づく解析の結果、CHADS2スコアおよびCHA2DS2-VAScスコアによる補正後、HCMは血栓塞栓症の発症に有意に関与することが示された。またCHA2DS2-VAScスコアが2点以上の患者のみならず、0点から1点の患者であっても高率に血栓塞栓症が認められた。以上の結果から、CHA2DS2-VAScスコアが0点から1点であっても、HCMを合併する非弁膜症性心房細動患者については、抗凝固療法を施行することが推奨されると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金沢大学医学倫理審査委員会にて承認された「北陸肥大型心筋症登録観察研究」の計画書・説明書に則り、肥大型心筋症(HCM)患者に対して研究の説明を行い、書面での同意を取得した。同時に、金沢大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会にて承認された「遺伝性心血管疾患における集中的な遺伝子解析及び原因究明に関する研究」の計画書・説明書に則り、HCM患者に対して病因遺伝子解析に関する説明を行い、書面での同意を取得した。 「北陸肥大型心筋症登録観察研究」では、患者情報に関しては個人情報分担管理者による連結匿名化を行った上で、登録日(西暦/月/日)、診断確定年、年齢(才)、生年・性別(男・女)、登録時の身長と体重、原因遺伝子が確定している場合には原因遺伝子、を記録した。臨床パラメーターとして、心エコー図指標:左房径(mm)、心室中隔厚(mm)、左室後壁厚(mm)、左室拡張末期径(mm)、左室収縮末期径(mm)、左室内径短縮率(%)、左室駆出率(%)、左室流出路圧較差(mmHg)、左室流入波形 (E/A) 、E/e’、を記録した。予後・心血管イベントとして、生存/死亡、全入院、心不全による入院、心室細動、ICDの有無、およびICDの適切・不適切作動の有無、心房細動、心房細動に伴う脳梗塞の有無、について追跡調査を行った。並行して、金沢大学医学倫理審査委員会にて承認された「非弁膜症性心房細動の血栓塞栓症発症予測における肥大型心筋症合併の意義について」の研究も推進した。 「おおむね順調に進展している」と判断した理由は、研究実績の概要で示した通り、HCMが非弁膜症性心房細動患者における血栓塞栓症合併の独立した危険因子であり、CHA2DS2-VAScスコアが0点から1点であっても、HCMを合併する非弁膜症性心房細動患者については抗凝固療法が推奨されることを、英語論文で報告できたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に肥大型心筋症例の全例登録は終了したので、平成31年度には臨床経過の追跡調査を行う。まずは、1)自覚症状:NYHA、2)身体所見:収縮期・拡張期血圧・心拍数、3)臨床検査:BNP(またはNT-proBNP)・Hb・総ビリルビン・BUN・クレアチニン・尿酸・Na・K、4)心エコー:左室拡張末期径・左室収縮末期径・左室駆出率・心室中隔壁厚・左室後壁厚・左房径・左室流出路圧較差・心尖部肥大・僧帽弁逆流、5)心臓MRI検査:ガドリニウム遅延造影法(LGE)、核医学検査(任意検査)、6)薬物治療:ACE阻害薬・ARB・β遮断薬・ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬・アルドステロン拮抗薬・ジギタリス・Ca拮抗薬・I群抗不整脈薬・アミオダロン・ワーファリン、7)非薬物治療:PPM・ICD・CRT-P・CRT-D・PTSMA・外科的心筋切除術(施行時期も)、8)心血管イベント:(発症から登録時までの期間に生じたイベント)、心不全増悪による入院、心血管疾患による入院、致死性不整脈(持続性心室頻拍、心室細動)、ICD作動、心臓移植、9)原因遺伝子変異について、確認する。その後、全死亡、心血管死(心不全死、突然死、脳卒中死)、非心臓死、心不全増悪による入院、心血管疾患による入院、致死性不整脈(持続性心室頻拍、心室細動)、ICD作動、補助人工心臓、心臓移植の施行について、1年毎に追跡調査を継続する。 同時に、次世代シークエンスによる病因遺伝子変異の解析を継続する。既に肥大型心筋症大家系で施行したエクソーム解析の他に、Target re-sequencing(遺伝子パネル解析)を行い、既知の原因遺伝子の中に存在する原因遺伝子変異を検出する。
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Causes of Carryover |
購入を予定した消耗品の金額が本年度予算残額を超えていたため、次年度の予算と合わせて、購入することとした。 また、国内や海外で開催される学会にて研究成果の発表を行うための旅費、論文投稿に係る英文校正等の費用として支出する予定である。
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[Journal Article] Effect of hypertrophic cardiomyopathy on the prediction of thromboembolism in patients with nonvalvular atrial fibrillation2018
Author(s)
Tsuda T, Hayashi K, Fujino N, Konno T, Tada H, Nomura A, Tanaka Y, Sakata K, Furusho H, Takamura M, Kawashiri MA, Yamagishi M; Hokuriku-Plus AF Registry Investigators.
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Journal Title
Heart Rhythm
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed