2017 Fiscal Year Research-status Report
緊急災害時の急性脳・心血管病に対する災害派遣専門チームの確立と予防法の開発
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17K09089
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
末田 大輔 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70750040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
掃本 誠治 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 教授 (30535638)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熊本地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地震災害と静脈血栓塞栓症の発生との関係が明らかにされており、社会問題となっている。災害時における車中泊のリスクはマスメディアによって報道されているが、車中泊と静脈血栓塞栓症との関係は十分に解明されていない。 2016年4月に熊本地震2016が発生した。この地震の特徴については、夜間の余震の回数が非常に多かった。そのため多くの犠牲者は家に帰ることを恐れ、避難することを選んだ。一部の人々は避難所に避難した一方で、多くの避難者は車中泊を選んだ。21か所の地方医療機関のアンケート結果によると、地震後2016年5月末まで51人の患者は入院が必要と判断された。登録された51人の患者のうち42人(82.4%)が車中泊を経験していた。年齢および地震からの発生日数は、非車中泊群(n=9)で有意に高かったが、車中泊群(n=42)では肺血栓塞栓症の存在が有意に高かった。 下大静脈フィルターの使用は、非車中泊群で有意に高かった。次に患者を肺塞栓なし群(n=13)と肺塞栓あり群(n=38)の2つの群に分けた。年齢および地震からの発生日数は、肺塞栓なし群で有意に高かったが、車中泊経験は、肺塞栓あり群で有意に多かった。われわれは災害時における車中泊の臨床的意義について述べた。専門の医療チームによるマスメディアを使用した予防啓発活動は、今後車中泊による静脈血栓塞栓症の発症を減らすことができるかも知れない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究者らは熊本震災時の最大の懸案事項であった肺塞栓症ならびに深部静脈血栓症といったいわゆるエコノミークラス症候群の県内の発生状況を調査し、震災時における車中泊の危険性について報告している(Canadian Journal of Cardiology 2018 in press)。 現時点においてはその他の各心血管疾患(心臓突然死、急性冠症候群、心不全、たこつぼ型心筋障害、大動脈解離、高血圧)の熊本県内における発症状況の調査を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、現時点においては各心血管疾患(心臓突然死、急性冠症候群、心不全、たこつぼ型心筋障害、大動脈解離、高血圧)の熊本県内における発症状況の調査を行っている。これらの結果をもとに熊本地震の影響で各種心血管疾患がどのように推移したのかとの考察を行うことができる。さらにはこれらの疾患群の中で有意な結果が得られたものに関しては詳細な患者プロファイル(発症日)などを追加で調査し、既報と参照しながら今後の災害医学さらには予防医学の発展に寄与できると考える。
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Causes of Carryover |
予定外の人件費・謝金が発生したため。 来年度は本年度得られた知見を基に学会発表ならびに論文報告を行う予定である。
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