2017 Fiscal Year Research-status Report
抗レトロウイルス療法下におけるHIVプロウイルスの量的および質的動態に関する研究
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17K09097
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
森 治代 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (20250300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 洋子 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (70291218)
川畑 拓也 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (80270768)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HIV / プロウイルス / 抗レトロウイルス療法 / hypermutation |
Outline of Annual Research Achievements |
抗レトロウイルス療法(ART)によりウイルスの増殖が強力に抑制された後も、HIV感染者の体内にはT細胞に組み込まれたプロウイルスが長期にわたって存続し、治癒への障壁となっている。そこで、長期HIV感染症例および急性感染症例についてART導入以前の未治療期とART施行下におけるプロウイルスの動態を詳細に比較解析することにより、プロウイルスの根絶、すなわちHIV感染症の治癒を実現するための手がかりを得られるのではないかと考えた。 平成29年度は、当所で保存されているHIV感染者の末梢血単核球検体の中で、2000年以前より長期に渡ってフォローアップが継続されている5症例を選定し、ART開始前およびARTにより血中ウイルス量が検出限界以下に到達して以後のHIVプロウイルスについて、コピー数の計測およびsingle-genome PCR/シークエンス法によるpol遺伝子の解析を実施した。その結果、長期HIV感染症例におけるプロウイルスのコピー数はART施行下である程度までは減少するものの、その後はほぼ一定数を維持していた。また、抗HIV-1活性を有する宿主因子であるAPOBEC3G/F(A3G/F)によりウイルスゲノムに導入されるG-to-A Hypermutationの出現頻度についても明らかな経年変化は認められなかった。一方、医療機関の新規受診者については現在、急性感染期・慢性感染期各4症例ずつの協力を得て経時的解析を行なっており、急性感染期にARTを開始した症例のプロウイルスには、A3G/Fによると考えられるG-to-A Hypermutationが慢性感染症例に比べて著しく高頻度に検出される傾向が認められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
協力医療機関における新規患者検体の収集開始時期が当初の予定より遅れたため、目標数にはまだ達していないが、急性感染期を含む様々な病期の検体が順調に集まりつつある。得られた各検体についてsingle-genome PCR/シークエンス法によるプロウイルスクローンの解析を行い、急性感染期にARTを開始した症例では、慢性期症例に比べてG-to-A Hypermutationが高頻度に検出される、という予想通りの結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性感染期あるいは急性感染期で治療を開始する新規受診者の症例数を増やし、治療開始時からVLが検出限界以下に到達するまでは2~3ヶ月毎、それ以降は6ヶ月~1年毎に検体の採取を行う。プロウイルスコピー数およびG-to-A Hypermutationが導入されたクローンの出現頻度について経時的変動を解析する。さらに、Hypermutation が検出されたクローンについては、Hypermut 2.0を用いて変異の数や出現箇所等をさらに詳細に解析する。 HIV-1 Vif蛋白はA3G/Fに結合して、その抗HIV-1活性を中和するウイルス側の対抗因子として知られている。そこで、vif領域についてもA3G/Fとの結合部位における変異を中心に解析を行う。
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Causes of Carryover |
新規患者検体の収集を開始する時期が遅れ、検体数が当初の予定より少なかったため、H29年度の遺伝子解析試薬等の購入費未使用分を次年度に持ち越すことになった。H30年度は検体数の増加が見込まれ、さらに詳細な遺伝子解析を行う計画である。したがって、持ち越し分はH30年度助成金の物品費と併せて遺伝子解析試薬等の購入に使用する。
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