2018 Fiscal Year Research-status Report
尿蛋白クレアチニン比を用いた、新たな学校検尿システムの構築
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17K09107
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
坂井 智行 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50608784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 雄介 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (30751127) [Withdrawn]
澤井 俊宏 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90452234)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 学校検尿 / 尿蛋白クレアチニン比 / 尿定量検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
【緒言】前年度は尿蛋白陽性と判定された生徒の残余検体を用い, 尿蛋白(uTP)と尿クレアチニン(uCr)の定量検査による尿蛋白の偽陽性率を検討した。その結果、従来の尿定性法では尿蛋白偽陽性率が非常に高いことが判明したが、尿蛋白定性陰性者は検査対象でないため感度特異度は算出できなかった。このため本年度は2次検尿の対象となった小学校の全生徒の残余検体を用い、uTPとuCrの定量検査にくわえ、近年 検診検尿で注目されている尿試験紙による尿蛋白クレアチニン比(P/C)を測定し、各々の陽性判定基準を変化した場合の尿蛋白検出における感度特異度を測定した。尿蛋白陽性はuTP/Cr 0.15g/gCr以上とした。また県教育委員会から提供を受けた学校生活管理指導表の診断名を用い, 判定基準の変更による腎炎疑い・管理中児の検出状況の変化を調査した. 【結果】小学校2次検尿の対象者: 455名(うち尿蛋白陽性者は49名)。 うち学校生活管理指導表で"腎炎疑い・管理中”の診断名が記載されていた生徒: 5名 。 <尿定性> (1+)が陽性判定基準の場合:陽性31名(感度 63.3%, 特異度 7.1%), 腎炎診断偽陰性2名. (2+)が陽性判定基準の場合:陽性12名(同24.5%, 同0%),偽陰性 4名. <P/C> (1+)が陽性判定基準の場合:陽性43名(同87.8%,同35.5%), 偽陰性1名. (2+)が陽性判定基準の場合:陽性16名(同32.7%,同8.1%), 偽陰性4名. 【考察】小学生の2次検尿を対象とした検討では、P/C(1+)以上が尿蛋白検出に優れ,腎炎診断の見逃しも少なく, 従来の尿定性法よりも優れている可能性が示唆された。 【今後の研究の展開】数年間同様の検討をおこない、慢性腎炎の存在が疑われる尿所見異常検出力(特に尿蛋白)に優れる学校検尿の検査項目の組み合わせを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初では、全県の学校検尿の残余検体を用いる予定にしていましたが、検査費用が限られていることから全県での残余検体の尿定量検査の実施は困難であると判断しています。しかし現在 研究協力をしていただいている検査施設は、滋賀県の約60%の学校検尿検査を受託しておりサンプルサイズとしては十分であると考えます。 平成30年度からは小学校の二次検尿対象者全員のみに対して尿定量検査を実施することで、各々の検査項目の尿蛋白検出における感度特異度が測定でき、さらに当初の研究計画では予定していなかった尿試験紙による尿蛋白クレアチニン比の有効性が示唆されました。平成31年度は平成30年度からの研究費の繰り越しを併せて用いることで、当初の計画通り尿アルブミン定量検査と尿ベータ 2 マイクログロブリンの定量検査も実施することが可能となる見込みであり, 計画としては概ね順調に進展していると考えます。
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Strategy for Future Research Activity |
現在 研究協力をしていただいている検査施設で実施される小学校の二次検尿対象者に尿定量検査を行うことを複数年継続し、慢性腎炎の存在が疑われる尿所見 異常の検出率を比較検討することで、各検査の感度特異度を測定し、慢性糸球体腎炎の検出率が高い学校検尿の検査項目の組み合わせを複数年の結果から推定する予定です。小学校での検討を複数年実施した後に、中学校で同様の検討を行う予定としています。
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Causes of Carryover |
スクリーニングとして用いられる各種尿検査において、各検査が慢性腎炎が疑われる尿所見異常の検出力(感度特異度)を比較検討するためには、本来は尿定性検査陰性者もあわせて尿定量検査を実施する必要があります。しかし当初計画していた尿アルブミン定量検査と尿ベータ2マイクログロブリン定量検査は高額であり、対象者全てに実施した場合に研究予算が枯渇し次年度の研究継続が困難となる可能性があったため平成30年度は これらの定量検査は実施せず尿蛋白定量検査のみの実施にしました。このため次年度使用額が生じました。平成31年度は、平成30年度に使用していなかった資金も併用することにより、当初の予定通り、二次検尿対象者全ての残余検体を用いた尿アルブミン定量と尿ベータ2マイクログロブリン定量を含む尿定量検査を予定しています。
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