2018 Fiscal Year Research-status Report
妊娠期化学物質曝露仔動物に対するエピジェネティックな肝発がん誘発機構の解明
Project/Area Number |
17K09162
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鰐渕 英機 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90220970)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / ヒ素 / 経胎盤ばく露 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでの研究で、妊娠期に有機ヒ素化合物Dimethylarsinic acid (DMA)を投与した母マウスより産まれた雄仔が、その成長後(84週齢時)に肝臓および肺に対してがんを誘発することが明らかにしてきたが、その妊娠期曝露による発がん機序の解明が待たれている。昨年度までに、妊娠期DMA曝露胎仔における母動物由来ヒ素の臓器別局在および化学形態について定量的解析を行なった結果、DMAの胎児への移行が確認されるとともに、その代謝物として、肝臓ではTMMTAが肺ではDMDTAがそれぞれ増加していることが明らかになり、臓器により異なることを確認した。 本年度は、DMA経胎盤曝露により作成した新生仔および6週齢の雄性仔マウスを用いて、種々の検討を行った。Ki67免疫組織化学染色により細胞増殖能を検討した結果、肺では新生仔期および6週齢時のいずれにおいてもDMA曝露群で有意な増加がみられたのに対して、肝臓では有意な変動がみられなかった。また、DMA経胎盤曝露新生仔肺におけるエピジェネティックな異常の関与について検討した結果、ヒストンH3K9me3の有意な増加がDMA経胎盤曝露群で明らかとなった。またヒストンH3K9me3のChIP-seqおよびマイクロアレイを実施した結果、いずれの実験法においてもKRT8およびMfap2が標的因子として同定された。興味深いことに、これら2つの遺伝子は新生仔期だけでなく、6週齢時においても発現変動を維持していた。 今後、肝臓においても、肺と同様にエピジェネティックな異常が関与することを検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DMA経胎盤曝露肺において、エピジェネティックな異常としてヒストンH3K9me3の増加を認めた。DMA経胎盤曝露肝臓においても、同様にエピジェネティックな異常の関与が示唆されている。 以上から、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画として、DMA経胎盤曝露肺において認められたエピジェネティックな異常が、肝臓においても存在しているかを検討する。加えて、エピジェネティックな異常を確認した場合には、その標的因子の探索を合わせて行う。
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Causes of Carryover |
先行研究で得られた肺におけるエピジェネティックな異常が、肝臓においても同様に起こっていると推察したが、臓器により砒素代謝物の割合や細胞増殖活性が異なることが分かった。そのため、当初の研究計画である肺に存在した異常に基づいたヒストンH3K9のメチル化やアセチル化の探索では良い結果が得られない可能性がある。そこで、肝臓において網羅的にヒストン異常の探索を行う必要性が生じた。繰り越し分は網羅的解析のための諸費用に充てる予定である。
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