2019 Fiscal Year Research-status Report
金属酸化物ナノ粒子曝露により放出されるエクソソームとその発がんリスク影響の解析
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17K09165
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
与五沢 真吾 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70381936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳澤 裕之 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10200536)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト大腸がん由来HT29細胞が放出する細胞外分泌膜小胞(EV)がヒト正常細胞(HaCaT)の細胞移動能に及ぼす影響について、スクラッチアッセイにより調べたところ、移動能の抑制が観察された。この効果は抗がん剤のエトポシドで処理したHT29細胞が放出するEVではみられなかった。それぞれのEVの成分を比較解析し、クラスリン重鎖がエトポシドで処理したHT29細胞が放出するEV中で増加していることが判明した。 金属ナノ粒子としては酸化亜鉛ナノ粒子(ZnONPs)を用いて研究を行っている。ZnONPsが化粧品や日焼け止めに用いられていることなどを考慮し、ヒトケラチノサイトに曝露させて上清から超遠心法でEVを回収した。この標品中にエクソソームマーカー分子(CD9など)が含まれていることをWB法により確認したうえで、ZnONPs曝露していない細胞とした細胞それぞれに由来するEV標品をSDS-PAGEして比較すると、分子量80-90kD付近にZnONPs曝露細胞由来EV標品にのみ発現しているバンドが観察され、質量分析の結果ケラチン1/2/5/6B/9/10などがヒットした。ケラチン1や10は分化型の角化細胞でみられるケラチンであり、酸化亜鉛ナノ粒子により分化が誘導される可能性が考えられた。間接蛍光抗体法により、分化マーカーであるケラチン1、インボルクリン(INV)の発現が上昇している細胞の割合が増加していること、全細胞抽出液のイムノブロットにより、INVの発現上昇を確認できたことから、ZnONPsにより分化が誘導されると考えられる。またZnONPsばく露1日後で、Aktのリン酸化増強もみとめられた。PI3K阻害剤添加でケラチン1、INVの発現が陽性の細胞割合は減少したことから、ZnONPsによるA549細胞の分化誘導にはAkt依存的な経路を介している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化亜鉛ナノ粒子によるケラチノサイトの分化誘導が確認でき、その分子メカニズムとしてPI3K-Aktシグナル伝達経路の関与を示唆するデータが得られたから。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は炎症や発がんに関する分子が、酸化亜鉛ナノ粒子曝露により放出されるEV中に含まれることを想定していたが、予想に反してケラチノサイトの分化を示唆するケラチンが検出されたため、計画を変更した。ケラチノサイト分化について、より詳細に分子メカニズムを明らかにしていく。また酸化亜鉛ナノ粒子曝露により放出されるEV中に含まれるmicroRNAについても検討していきたい。
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Causes of Carryover |
当初はエクソソームの成分として炎症や発がんに関係する因子が含まれているのを想定していたが、実際に精製したエクソソームを質量分析してみるとそのような因子は見つからず、代わりにケラチノサイトの分化誘導を示唆する因子がヒットしたため、新たに酸化亜鉛ナノ粒子がケラチノサイト分化誘導を介して皮膚バリア機能に影響を及ぼす可能性を検討する必要が生じ、研究計画の見直しが必要となったため研究期間の延長を申請したため。
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Research Products
(5 results)