2018 Fiscal Year Research-status Report
職の不安定性が労働者の健康に及ぼす影響:緩衝要因の検討を含めた前向きコホート研究
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17K09172
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井上 彰臣 北里大学, 医学部, 講師 (70619767)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 職の不安定性 / 仕事の資源 / メンタルヘルス / 生理指標 / 前向きコホート研究 / 産業保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本人労働者を対象に,職の不安定性が労働者の心身の健康(精神的健康および冠動脈疾患の危険因子となる各種生理指標)に及ぼす影響を明らかにするとともに,これらの関連を緩衝する仕事の資源を明らかにすることを目的としている。3年計画の2年目である今年度は,製造業(2事業場)に勤務する労働者324名を対象にWEBによる自記式調査を実施し,職の不安定性と心理的ストレス反応およびワーク・エンゲイジメントとの関連における,仕事の資源(仕事のコントロール,上司の支援,同僚の支援,役割明確さ,金銭・地位報酬,尊重報酬,手続き的公正,相互作用的公正,ソーシャル・キャピタル)の修飾効果を検討した。 その結果,心理的ストレス反応に対する,職の不安定性と上司の支援,手続き的公正およびソーシャル・キャピタルの有意な交互作用が認められ,これらの仕事の資源が充実していると知覚している者は,不足していると知覚している者に比べ,職の不安定性と心理的ストレス反応との関連が弱かった(すなわち,職の不安定性と心理的ストレス反応との関連に対する上司の支援,手続き的公正およびソーシャル・キャピタルの有意な緩衝効果が認められた)。また,ワーク・エンゲイジメントに対しては,職の不安定性と手続き的公正の有意な交互作用が認められ,手続き的公正が低いと知覚している者は,職の不安定性とワーク・エンゲイジメントとの間に有意な負の関連が認められたのに対し,手続き的公正が高いと知覚している者は,職の不安定性とワーク・エンゲイジメントとの間に有意な関連は認められず,手続き的公正が職の不安定性によるワーク・エンゲイジメントの低下を抑制することが示唆された。 上記の知見は,あくまでも横断データによるものであるため,来年度は追跡調査を実施するとともに,各種生理指標を含むデータベースを構築し,より精緻な検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象企業の選定に遅れが生じていたが,製造業(2事業場)において調査への参加同意が得られ,ベースライン調査に関する一連の計画(調査の準備・実施,データ解析,個人・職場への結果返却)を滞りなく遂行することができた。横断データによる解析ではあるが,「研究実施の概要」で示した多様な仕事の資源を測定するとともに,職の不安定性と心理的ストレス反応およびワーク・エンゲイジメントとの関連を修飾する仕事の資源が明らかになったことから,おおむね順調に進展していると考えられる。一方で,各種生理指標のデータ取得が遅れているため,今後,より詳細な検討を行えるよう,データベースの構築を進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.調査継続の確認(平成31年4月~令和元年5月):調査対象企業の担当者に対し,調査継続の可否を確認するとともに,WEB調査票の内容で加筆・修正が必要な箇所がないかについて,意向を確認する。 2.WEB調査票の加筆・修正(令和元年6月):調査対象企業から,WEB調査票の内容について加筆・修正の希望があった場合,その希望に応じて加筆・修正を行い,追跡調査で使用するWEB調査票を確定する。 3.追跡調査の実施(令和元年7~8月):調査対象企業の担当者に,WEB調査票への回答依頼の配信を依頼する。回答状況に応じて,リマインドの配信を依頼する。 4.データベース構築・データ解析・結果返却・研究成果報告(令和元年9月~令和2年3月):WEB調査終了後,各種生理指標を含めたデータベースの構築,データクリーニング,統計解析を行う。調査対象企業の要望に応じ,個人・職場への結果返却を行う。データベース構築後,国内外の学会で研究成果を発表するとともに,国際英文誌に論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
当初,紙媒体による自記式調査を想定し,郵送やデータ入力等の事務作業にかかる費用として,人件費・謝金を計上していたが,調査対象企業の希望によりWEB調査で実施することになり,人件費・謝金の支出が発生しなかったため,次年度使用額が生じた。 次年度は,繰越金と合わせて,追跡調査にかかる費用(WEB調査票のメンテナンス費,調査対象企業への訪問にかかる旅費や通信費)のほか,学会での研究成果報告および情報収集にかかる旅費,論文執筆にかかる英文校正費や論文掲載料として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)