2017 Fiscal Year Research-status Report
環境化学物質によるドーパミン神経系疾患のDOHaD仮説検証
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17K09180
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
石堂 正美 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (60211728)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドーパミン神経疾患 / 化学物質 / DOHaD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでに明らかにされてきた環境化学物質によるドーパミン神経系に起因する2つの行動毒性の関連性をDOHaD仮説に基づき検証する。すなわち、環境化学物質によるドーパミン神経系の発達障害の結果としての多動性障害とドーパミン神経変性疾患の結果としての寡動症であるパーキンソン病との関連性をラットモデルを用いて調べる。また、時系列的に両者の変曲点を明らかにし、その分子機序をトランスクリプトーム法により明らかにすることを目標にしている。 平成29年度はドーパミン神経毒性化学物質の新生期曝露による多動性障害モデルラットの作成と長期影響モニタリングの開始した。具体的には、下記を実施した。 市販の妊娠Wistarラットを購入し、ドーパミン神経毒である農薬ロテノン(0~3 mg/kg)はオリーブオイルに懸濁した。生後5日齢に体重を約10gの仔ラットを選別して、全量30μLを経口投与した。投与後、母親に戻し、3週齢で離乳した。5週齢からSupermex(室町機械(株))を用いて自発運動量の測定を開始した。防音箱の明暗は12時間サイクルに設定した。若年期の多動性障害を確認できたラットを選別し、長期モニターに供した(約72週齢を目処とする。) ドーパミン神経系の発達障害は、カテコールアミン合成酵素に対する抗体を用いて確認した。摘出した脳組織を10%ホルムアルデヒド溶液に浸漬し、固定した。固定した脳組織はパラフィンブロックにした。5μm程度の脳切片を得、脱パラフィン後、通常の免疫染色工程を実施する。1次抗原抗体反応は低温で16時間以上行う。中脳黒質のカテコールアミン合成酵素の染色が低下していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの実績に立脚した研究計画を立案したためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記を重点的に実施し、目標を達成する。 1.ロテノン(0~3mg/kg)の生後5日齢曝露のほかに、生後2週齢或いは4週齢で曝露し、Supermexによる自発運動量の測定を上記の要領で実施する。多動から寡動への変曲する曝露時期を推定する。もし、変曲点が見出せないようならば、生後5日齢の曝露に加えて更なる曝露、すなわち多段階曝露を同じ要領で行う。
2.各実験系の各モデルから得られた中脳組織のDNAアレイ法を実施する。摘出した中脳は液体窒素の中で急冷凍する。全RNAを市販のRNeasy等のキットを用いて抽出する。分解していないRNAを用いてcDNAを作成後、ビオチン標識cRNAを作成する。この標識cRNAを断片化後GeneChip Rat Genome 230 (Affymetrix社)とハイウリダイズする。得られたChipで遺伝子発現変動の有無を定量化する。更に、得られた各トランスクリプトームデータをたとえばパスウェイ・スタジオ(Aradne Genomics社)を用いてパスウェイ解析に供し、その分子機序を推定する。 また、各モデル間の遺伝子発現変動に相関があるかどうかは、Rなどの統計ソフトを利用し回帰分析、主成分分析などの解析を実施しる。
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Causes of Carryover |
文部科学省新学術領域研究、先端モデル動物支援プラットフォームによる支援や、順調な実験推移による材料購入費が当初より大幅に減額できたことによる。これらは次年度予定されている高額な実験(浸透圧ポンプの購入やトランスクリプトーム解析)に充填する予定である。
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Research Products
(2 results)