2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K09185
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
阿部 仁一郎 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 総括研究員 (10321936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高島 康弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20333552)
森部 絢嗣 岐阜大学, 応用生物科学部, 特任准教授 (50456620)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 食中毒 / 食品衛生 / 寄生虫 / 住肉胞子虫 / ジビエ |
Outline of Annual Research Achievements |
岐阜県産ニホンジカに由来する住肉胞子虫シストの、18SリボソームRNA遺伝子(18S rDNA)とミトコンドリアチトクロームオキシダーゼサブユニット1遺伝子(cox1)の2領域を解析しその分類を試みたところ、cox1の解析結果では5タイプ(タイプ1~5)に分類され、タイプ4はリトアニアのニホンジカより報告のあるSarcocystis pilosaと同定され、他の4タイプは新種と考えられた。 18S rDNAの解析では、明確に5タイプを分類することはできなかったが、国内のシカより未同定種として報告され、18S rDNAの塩基配列のみが登録されている住肉胞子虫は、タイプ1(エゾシカ由来の虫種)またはS. cervicanisに近縁な種類(兵庫県産ニホンジカ由来の虫種)と考えられた。 得られたcox1シーケンスの情報を基にタイプ特異プライマーを作製し、形態とタイプとの関連性を検討した。タイプ1のシスト壁は厚く先端が丸みを帯びた指状突起物で覆われ、遺伝的に近縁なS. silvaの同構造と類似していた。タイプ2、3の壁にも厚みを認めたが、先端が尖った細い突起物で覆われていた。一方、タイプ4、5のシスト壁は明らかに薄く、その表面は毛状突起物で覆われ、タイプ4は形態的にもS. pilosaの特徴と一致した。 以上の結果から、①シカ寄生種の同定には18S rDNAよりもcox1領域の遺伝子解析が有効であった。②岐阜県産ニホンジカには遺伝子レベルで異なる5タイプが分布し、4タイプは新種と考えられた。③18S rDNAの系統解析から、国内の他地域に生息するエゾシカ、ニホンジカには、今回得た5タイプと同じ種類や異なる種類が分布しており、特にタイプ1は国内のシカに広く分布している可能性があると考えられた。④タイプ特異PCRは、岐阜県産シカ寄生住肉胞子虫5タイプの簡易な鑑別法として有用と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究当初は、ジビエの狩猟期に採取された検体(肉片)を採取し、そのサンプルがある程度貯まった時点で住肉胞子陽性検体を選別し、陽性検体からシストを分離して遺伝子解析を行う予定であったが、検体の受け渡しの連絡調整に手違いがあり、陽性検体からのシストの分離とその後の遺伝子解析が年度末へずれ込むことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
①今年度提供された住肉胞子虫陽性のシカ肉検体は50数件あり、まずはその検体に寄生する住肉胞子虫について、形態と遺伝子レベルで同定を進め、5タイプの形態学的特徴と遺伝学的特徴を明確にする。さらに、新たなタイプと既知種の存在の可能性を検索する。 ②陽性検体の病理組織学的検査から、シカにはどの程度住肉胞子虫が濃厚に寄生しているのかを調査する。 ③タイプごとに、単位シスト中のブラディゾイト数を推定する。 ④シカ寄生住肉胞子虫の検出と、それらの鑑別を可能とする試験系を開発する。 ⑤市場に流通するジビエ商品中における住肉胞子虫の分布とその生死を明らかにする。 以上の調査により、ジビエ寄生住肉胞子虫が食中毒の原因となるか否かについてそのリスク評価を行う。
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Causes of Carryover |
次年度に新たに作製した遺伝子増幅試薬を検討するため、その費用を次年度使用額とした。
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Research Products
(2 results)