2017 Fiscal Year Research-status Report
アニマルセラピーにおける動物由来感染症起因細菌の網羅的検索
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17K09243
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
村松 康和 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50254701)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔内細菌 / 人獣共通感染症細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年9月、および2018年3月に行われたセラピー犬適性試験に参加したイヌ57匹、ならびにその飼い主56名から口腔内スワブサンプルを採材した。飼い主及びその家族からの採材については、研究者所属機関の倫理審査委員会で実施承認された後、採材時には、本研究の趣旨について説明を行った後に、飼い主から口腔内スワブ採取、そこから得られる分離菌株ならびに抽出DNAの使用・保管について承諾を得た上で、イヌおよび飼い主からスワブ採材を行った。また、採材時には各飼い主にアンケート調査(居住地域、イヌの使用頭数・年齢・性別、イヌの歯の手入れの状況、イヌとの接触様式、飼い主の歯磨き状況・年齢層)を行った。 得られたスワブを用いて、5%馬脱繊維血液加ブレインハートインフュージョン寒天培地に画線塗抹し、37℃で7日間培養した。さらに、塗抹後のスワブから市販のキットを用いてDNA抽出を行った。DNAは使用時まで-30℃で保管した。 2017年9月採材分ではイヌ口腔内から179菌株、ならびにヒト口腔内から157菌株を、2018年3月採材分ではイヌ口腔内から218菌株、ならびにヒト口腔内から213菌株をそれぞれ分離した(総計767菌株)。現状までのBiotyperによる菌種同定の結果、イヌ・ヒト共にナイセリア属菌、ブドウ球菌属菌、連鎖球菌属菌が主な分離菌であった。但し、いずれの菌属においても、イヌ・ヒトに共通する菌種は見つかっていない。例えばナイセリアの場合、イヌ口腔内からはNeisseria weaveriやN. zoodegmatisが、ヒト口腔内からはN. flavescensが検出されている。イヌ口腔内から、人獣共通感染症細菌であるBergeyella zoohelcumが検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進行状況は「おおむね順調」から、「やや遅れている」の中間程度であるとみている。 「おおむね順調」と判断する理由としては、Biotyper(MALDI-TOF MSを応用し、リボソーム蛋白画分のプロファイルから迅速・正確に菌種を同定する)によって着実に菌種同定の結果が蓄積されてきている点をあげることが出来る。その一方で、「やや遅れている」と判断する理由としては、大量の分離菌の菌種同定において、その使用が大前提となるBiotyperと、その駆動装置であるAutoflexの稼働状況が時折不安定になることがあり、作動状況の確認作業が必要となったため。そのことによって、一時的にではあるが、菌種同定のために本機材を使用出来ない時期があったことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Biotyperによる菌種同定を推進し、イヌ口腔内、およびヒト口腔内細菌叢構成菌に関するデータ収集を完了させる。イヌおよびヒトの口腔内細菌叢について全体的な比較を行い、セラピー犬及びその候補犬と飼い主における細菌の動態について検証する。 ヒトと動物の口腔内細菌叢の比較の結果から、次世代シークエンサーによる口腔内細菌叢に関する、遺伝子レベルでの網羅的解析の対象となる検体を選別する。選別の基準として、現状「イヌ・飼い主双方で共通する病原体を保有することが明らかとなった」「イヌ、あるいはヒトで、公衆衛生上重要な病原細菌を保有していた(例えば、人獣共通感染症の原因菌)」を考えている。 次世代シークエンサーによる口腔内細菌叢の網羅的解析を実施するにあたって、一つ大きなという問題がある。口腔スワブから抽出されたDNA量が極めて少なく、このままの状態では次世代シークエンスを行うことが不可能である、と強く予想されることである。そのため、調査対象となった各DNAサンプルについて、先ずはPCRにより細菌分類学上の”門”レベルを標的とする遺伝子増幅を行う(例えばバクテロイデス門、フィルミクテス門、プロテオバクテリア門など)。得られた増幅産物について次世代シークエンサーによる口腔内細菌叢の網羅的解析を実施する。
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Causes of Carryover |
申請時で購入予定であったインキュベーターを、採択後に消耗品費に振り替えたことにより、若干の誤差が生じたものと考えられる。
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