2018 Fiscal Year Research-status Report
外国人医療人材への支援プログラムの構築-外国人技能実習制度の活用に向けて―
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17K09249
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
井野 恭子 椙山女学園大学, 看護学部, 講師 (30399240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 浩美 西武文理大学, 看護学部, 講師 (00554700)
佐藤 晶子 椙山女学園大学, 看護学部, 助教 (20593510) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | EPA看護師 / 日本語 / コミュニケーション困難 / 異文化交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究において得られたEPA看護師のレジリエンスへの自由記述から、日本で就労する中で遭遇する困難な状況を明確化した。その結果を基に、半構成的面接の内容を抽出し、協力の得られた2病院のEPA看護師8名および、ともに働く日本人看護師14名に対しインタビュー調査を実施した。この2病院はEPAによる外国人人材の活用が開始された時より複数名の人材が就労する病院であった。 EPA看護師が定着している病院の特徴として、この制度での外国人人材活用に対する組織的理解が高いこと、さらに人材が定着できるよう様々な支援策を実施していた。EPA看護師が遭遇する困難な状況の存在は、日本人およびEPA看護師の95.4%が認めていた。日本語での会話が不十分なことに起因し、他職種から叱責を受ける経験や、患者や家族とのコミュニケーションに支障をきたすこと、方言を含む地域特性によるコミュニケーション困難、宗教を含む異文化に対する互いの理解不足によって生じる意思疎通困難などが明らかとなった。その状況への対応は、言語的な課題には日本のテレビドラマなどマスメディアを活用して日常会話を学ぶ、同僚にわからないことを伝えて対応を代わってもらう、医療や看護の学習を帰宅後継続的に行っているなどがあった。ストレスコーピングでは、いやなことがあると帰宅後にお祈りをする、母国の出身者同士で食事や話をする、母国の家族とSkypeで会話するなどであった。さらに職場主導でEPA看護師と日本人看護師の交流を図ることが有効であった。 本研究では就労期間が5年継続している人材や、臨床現場でチームの一員としてスタッフからの信頼を得て活躍している看護師がいることも明らかになった。それらの人材は家族同伴で日本へ定住することも視野に入れ、自立した生活の実現に向けて取り組んでいるが、それは一部の人材に限られていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、研究計画書での第2段階であるEPA看護師および日本人看護師に対し、互いの強みをアンケート調査およびインタビュー調査し、実際にケア場面の参与観察を行うこと、および第3段階ではケア対象者に対するケアへの満足度調査を行う予定であった。現在の状況は第2段階の調査までであり、その中でもケア場面の参与観察に関しては遂行できていない。研究対象がEPA看護師である研究が急激に増加していること、EPA看護師が日本に定着することが困難であることから、本研究に対する協力が得られにくくなっていることも要因の1つである。さらに、ケア場面の参与観察に関しては、各病院とも患者の権利擁護の観点からも、倫理審査では実現可能性は厳しいものであると考える。 今回、研究に協力を得られた病院は、EPA看護師の受け入れに力を入れているためであると考える。しかし、ケア場面への参与観察となると、その受け入れに困難であることが予測される状況であった。そのため、ケア場面の参与観察は行わず、当事者からのインタビュー調査の結果から検討する方向へ変更が必要と考える。 しかし、EPA看護師および、ともに働く日本人看護師へのインタビュー調査を実施できたことにより、EPA看護師が捉える逆境の実態と、それをどのように乗り越えようとしているか、また、日本人看護師がその過程をどうとらえているか、把握することができた。この結果から、今後の研究遂行への示唆を得られるよう整理したい。 研究遂行がやや遅れた要因に本務校の業務が挙げられる。本務校の業務と研究活動の時期的な調整を図り、研究に邁進できる時期には、短期集中で調査活動に取り組めるよう、さらなる工夫を重ねていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年4月1日より、外国人技能実習生制度に介護福祉分野が対象となった。これまでの調査対象は、看護師に焦点を当ててきているが、技能実習制度を鑑みると介護福祉分野にも焦点を当てる必要性が考えられる。そこで、研究計画を見直しを諮り、本年度は介護福祉分野の外国人労働者および日本人労働者を研究対象に、就労内容の実態調査、およびレジリエンスについて調査を進めたい。 対象施設は、昨年度、研究協力を得た病院の関連施設の方々や、研究者の居住地域に近い施設から協力依頼を図りながら、可能な限り実現可能性をふまえて推進したい。 本研究のポイントであるケアの質の評価視点である「構造」「過程」「成果」のうち、「過程」は対話とリフレクションによって導き出そうと考えている。これは、研究代表者のこれまでの研究実績や、昨年の研究実績であるインタビューの調査結果からも、インタビュー調査、およびその場におけるリフレクションの重要性が示唆されているため、本研究の重要な視点と捉えたい。 また、本務校の業務との調整に苦慮しているが、調査期間をあらかじめ限定的に設定し、確実に遂行できるようにして取り組みたい。
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究計画のうち、研究への協力病院が少なかったことから、現地調査の使用額が減少した。本来、全国のEPA看護師が働く病院を対象に考えていたため、研究旅費が多く必要と考え申請していたが、繰越金となった。さらに、インタビューデータのテープお越しに人件費や委託費を申請していたが、研究者自らが行うことにより、その使用額を減少することができた。 平成31年度は、研究対象を介護福祉士へ拡大し、外国人人材の実態をさらに調査する予定である。そのため、物品費400,000円、旅費400,000円、人件費・謝金300,000円、その他120,000円として予算計画する。
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