2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of forensic pathological diagnosis for long-term adult abuse-Proof of chronic stress exposure focusing on ACCX
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17K09266
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山下 裕美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50706174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60617421)
村瀬 壮彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40823315)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 前帯状回 / 長期的ストレス / ストレス特異的反応遺伝子 / 法医解剖 / 高齢者虐待 / ドメスティック・バイオレンス |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者虐待やドメスティック・バイオレンスを疑う法医剖検症例は「長期的ストレス負荷」に暴露されていた可能性が高い。しかし、それらを証明する特異的な診断マーカーは未だ確立したものがなく、その同定が望まれている。 申請者らは、先行研究で、長期的ストレス負荷後のラットに侵害刺激を与えると前帯状回に電気生理学的な変動が起こることを確認してきた。これは、前帯状回に分子生物学的な変動が生じていることを意味する。この「帯状回」は、大脳辺縁系の一部でストレスに対する情動性応答や下行性鎮痛系に関与する重要な部位である。 そこで、電気生理学的変動が認められた前帯状回にどのような分子生物学的変化が生じているのか、RNA次世代シーケンスを使用したTranscriptome解析を行った。その結果、Cholinergic Receptor Muscarinic 5(CHRM5)に変動が認められた。このCHRM5は、ムスカリン性コリン作動性受容体でG蛋白質共役受容体ファミリーに属し、シナプス伝達に関与することが疑われている。その他にもいくつかのmRNAが同定され、シナプス伝達や前帯状回における電位変化への関連を疑っている。今後は、遺伝子カスケード解析を行い、ストレス特異的反応遺伝子を同定し、現行のラットモデルでmRNA及び蛋白質の発現量を確認していく必要があると考えている。 現在、小児では「胸腺の萎縮」が長期的ストレス負荷(例:虐待)の診断の指標として汎用されているが、成人は胸腺が脂肪織化するため使用できない。申請者らが現在行っている研究でストレス特異的反応遺伝子が特定されれば、診断の指標として用いることができる。よって今後もこの研究を継続する意義があると考えている。最終的には、このストレス特異的反応遺伝子を選択的に制御する新薬の開発に繋げ、虐待からの「こころの回復」に寄与できればと考えている。
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