2018 Fiscal Year Research-status Report
Simultaneous detection of multiple aquatic microbes using TaqMan PCR system
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17K09268
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
湯川 修弘 宮崎大学, 医学部, 教授 (30240154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿崎 英二 宮崎大学, 医学部, 准教授 (70284833)
園田 愛 宮崎大学, 医学部, 助手 (10762122)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 法医学 / 溺死の診断 / リアルタイムPCR / 水棲細菌 / 水棲微生物 / 珪藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
壊機法を用いた従来の珪藻検査は,水棲微生物を対象とした検査法の中で最も信頼されている検査法である.しかし,検査手法が煩雑な上に極めて危険な94%発煙硝酸を用いるため安全面に大きな問題を抱えている.また,腎臓や肝臓からの検出感度や特異性の低さにも問題がある.そのため新しい検査法の確立は,溺死の診断精度の向上に急務である.平成30年度は,分子生物学的手法を用いた新しい検出システムとしてTaqMan Real-time PCR法のPrimerの設計及びその至適条件を検討した.本研究では簡便かつ迅速なスクリーニング検査法の開発を目指しているため,ターゲットとする珪藻の検出は,種レベルではなく,できる限り多様な属の珪藻を一括して検出できるように試みた.標的遺伝子としては葉緑体関連遺伝子(GAPDH,rbcL,ndhF, tufA,matK,atpA, atpB,psbA, trnDYE, trnL-F, trnV, rpoA, rpoB, rpoC1,psaA, psaB,psbB,psbC,psbD,psbEFLJ)などを検討した.日本DNAデータバンク(DDBJ)から各遺伝子の塩基配列情報を取得し,GENETYX-MAC Ver.20などのソフトウェアを用いてアライメント解析を行った.さらにBLASTを利用しデータベース上で特異性を確認した.また,各プライマーセットの検出感度や特異性を検討するためにNIES Collection(National Institute for Environmental Studies, Microbial Culture Collection)より珪藻の標準株(淡水性珪藻としてAchnantidium,Aulacoseira,Nitzschia, Tabellaria,Ulnaria, 海水性珪藻としてEucampia,Odontella,Pseudo-nitzschia,Thalassionemaなど)を購入し,培養後,ゲノムDNAを抽出・精製した.現在,設計した様々なプライマーセットの有効性を検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,培養したすべての珪藻の標準株を一括して検出可能なプライマーセットをいくつか得られた.これらのプライマーセットは,海水性や淡水性など生息水域に限らず,一つのプライマーセットで一括して検出することが可能であった.また海や河川などから採取した環境水抽出DNAに対しても反応性を確認できた.また,これまで溺死体や非溺死体から検出されたことのある珪藻以外の他の水棲微生物との交叉性(偽陽性)は認められなかった。さらにヒトゲノムとの交叉性も認められなかった.一方,検出限界は1~10 pg/tubeで珪藻の多くの属を一度に検出できるプライマーセットとして良好であった.このように,珪藻のDNAを指標とした検出システムを開発するにあたり,本年度に実施した調査によって得られた研究成果は最終年度に向けて重要な基盤となり得ると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
法医学の研究領域において,分子生物学的手法を用いて珪藻を検出する試みは主に日本や中国の研究者らによっていくつか報告されているが,実務レベルで利用可能な方法は未だ確立されていない。本研究ではこれまでの実験結果から,当初の目的に合ういくつかのプライマーセットを有力な候補として確認できた.そこで最終的に検出感度や特異性の最も優れたプライマーセットを決定し,法医学実務に利用できる検出システムを確立するために,次年度も引き続き検証を行う.また国内外の法医学分野の論文やテキスト等の中に,珪藻のDNAを指標にした検出法は,従来の壊機法と比べて検出感度が向上し期待できるとの記述がある.今後本研究においても,珪藻のDNA検出が従来の壊機法による顕微鏡検出と比較して,本当に検出感度や特異性の点で優れているのかも合わせて検討していきたい.
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Causes of Carryover |
人手不足により解剖・検査業務等に従事する時間が増え次年度使用が生じたが,その額は3万円以下(全体の1%)であり,これらは次年度に購入が必要となる試薬などの物品費(FastStart Essential DNA Green MasterやQubit 1x dsDNA HS Assay Kitなど)の一部にあてる予定である.
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