2017 Fiscal Year Research-status Report
全血を試料とした単剤及び多剤併用時の薬毒物中毒評価に関する基礎データの構築
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17K09278
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
斉藤 剛 東海大学, 医学部, 准教授 (30266465)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急性薬物中毒 / 血清中濃度 / 全血中濃度 / 濃度比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当院高度救命救急センターへ搬送された急性中毒患者を対象とした血清及び全血中の中毒起因化合物の分析を行った。試料は、同じ時間に採血された試料を用いて濃度の比較を行った。抽出は、固相抽出で行った。その結果、化合物によって主に3つのパターンに分かけられた。カフェインは、血清と全血の濃度比は、濃度によらずほぼ1であった。また、多くの化合物は、血清の方が全血よりやや高い濃度(1~2倍の範囲)で検出される傾向があった。これは、濃度に依存しないと思われた。更に、クエチアピンは、低濃度にでは血清の方が高濃度であったが、濃度上昇に伴いほぼ同じ割合に減少する傾向が認められた。 また、フェノチアジン系化合物に於いては、全血中濃度が極端に低くなる傾向が認められた。最近の法医解剖試料は、QuEChERS法が薬物抽出に用いられる。また、全血からの薬物抽出には、しばしば珪藻土カラムが用いられる。そこで、QuEChERS法と珪藻土としてK-Soluteを用いて全血からの抽出の比較を行ったところ、QuEChERS法では血清と同じように抽出が可能であった。しかし、K-Soluteでは濃度に関係なく全く検出されなかった。次にメーカーの異なる珪藻土、K-Solute、ChemElut、ISOLUTEを用いて比較したところ、K-Solute以外は、似たような結果が得られた。更に、K-Soluteの抽出液のスキャン分析を試みたところ、フェノチアジン化合物が酸化を受けている可能性が考えられた。そこで、フェノチアジンの酸化代謝物の試薬で確認したところ、現在までN-オキサイド体が確認された。ChemElut、ISOLUTEによる抽出に於いても、N-オキサイドが確認された。また、フェノチアジンの構造上、他の部位も酸化を受ける可能性がある。検出されない原因が酸化によるものか否か、現在、解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、急性薬物中毒患者の搬送症例が例年と比べ極端に少なかったため、データの収集が例年の症例数からの予想より少なかった。これは冬期の寒冷が影響していることに起因すると考えられる。更に薬剤の安全性の問題から、ごく最近、販売を中止した薬剤がある。これも減少した一因と考えられる。 一方、集めた薬物データには、化合物としての偏りがあるため、更に多岐にわたるデータの蓄積を行う必要がある。 また、フェノチアジン系化合物を珪藻土で抽出する際、製品により異なるデータが得られることが判明した。現在、この点を通常の固相抽出を含めて解明あるいは回避する方法を見つけている。
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Strategy for Future Research Activity |
フェノチアジン系の化合物を抽出する際の最適な方法を検討しているため、これを継続的に行う。 臨床データに関しては、継続的にデータの蓄積を行うが、進捗により論文化することを計画している。
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Causes of Carryover |
本年度、薬物の抽出方法により定量値が異なる現象が見つかった。特にフェノチアジン系化合物に顕著に認められた。この原因と解決策を見つけるために時間を要しているため本年度中に使用することができなかった。次年度は、この点の解決策を見いだすことを課題の1つに加えて使用する消耗品代に充当する計画である。
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Research Products
(2 results)