2018 Fiscal Year Research-status Report
合成カンナビノイドの体内動態とカタレプシー発現との関連性の解明
Project/Area Number |
17K09282
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松本 智寛 関西医科大学, 医学部, 講師 (90405176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 合成カンナビノイド / イメージング質量分析 / カタレプシー |
Outline of Annual Research Achievements |
危険ドラッグとして濫用される合成カンナビノイドは、多様な化学構造を有し大麻様の生理活性を示す化合物である。この化合物は脂溶性が非常に高く、摂取後速やかに脂肪組織中に蓄積されるものと考えられている。しかし実際の各臓器組織にどのように分布しているかについては、いまだ確たる研究データが示されていない。そこでMALDI-IT-TOF型質量顕微鏡を用いて、薬物を投与したC57BL/6J雄性マウスの各臓器組織におけるイメージング質量分析を実施した。昨年の研究でマトリクスとしてはCHCAが適していることが判明したが、感度不足であったことからさらに蒸着条件等を検討し、膜厚等の最適化により感度を向上させた。次に、JWH-210を1-5mg/kgの用量で腹腔内投与し、脳、肺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓を摘出して速やかに凍結した後、20μmの薄切とし、今回最適化した条件でマトリクスを蒸着してイメージング画像を測定した。その結果、各臓器中に広くJWH-210が分布していることが観察され、特に脳では脈絡叢に高濃度に分布していることが明らかとなった。また、0.05-0.5 mg/kgのJWH-210を腹腔内投与したマウスに対しBar test法にてカタレプシー持続時間を測定した。さらに同様に薬物を投与したマウスを経時的に屠殺して心臓血を採取し、血中消失半減期を求めてカタレプシー持続時間との比較検討を行った。その結果、JWH-210の消失半減期は約0.5hであり速やかに血中から消失したのに対し、カタレプシーは投与後4h後においても認められ、血中濃度とカタレプシー持続時間には乖離が認められた。ヒトの中毒事例おいても合成カンナビノイドの血中濃度が有害作用の発現強度を直接反映しない事例が報告されており、今回の結果はその事実を反映したものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年の研究においてはラットを用いた実験系を予定していたが、実験を遂行するにあたり手技上の問題からより扱いやすいマウスを用いた実験系へと修正した。これにより一部基礎検討のやり直しに迫られた関係で研究に遅れが生じたものの、マウスに切り替えたことで動物の取り扱いが容易になり実験は前進した。また、低温下で速やかに組織切片を作成する技術の習得に予定より時間がかかったほか、台風の影響による装置の不調による実験の遅れも重なった。
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Strategy for Future Research Activity |
合成カンナビノイドのうち現在は主にJWH-210を用いた実験を行っているが、イメージング、生体半減期の測定、カタレプシーの測定の全てにおいて一定の目処が立ったことから、次年は他の化合物へと順次拡大する予定である。しかしながら、昨年に比べて質量顕微鏡の条件最適化による高感度化により生体試料のイメージングは可能となったものの、いまだ十分とは言えず薬物投与量を当初の予定よりも高く設定し直す必要があった。毒性の高い化合物については投与量にも限りがあることから、より高精度な蒸着装置の購入も視野に入れさらなる高感度化も同時に模索していく予定である。
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Research Products
(2 results)