2019 Fiscal Year Research-status Report
原因不明の消化器症状と食思不振患者における脳―消化管神経機能の類似性の検討
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17K09289
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
庄司 知隆 東北大学, 大学病院, 助教 (40360870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 由香 東北大学, 大学病院, 助教 (00343046)
佐藤 康弘 東北大学, 大学病院, 助教 (20375033)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性悪心嘔吐症候群 / 胃電図 / 機械学習 / 機能性消化管障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性悪心嘔吐症候群(Chronic nausea and vomiting syndrome:CNVS)は器質的疾患を認めないにもかかわらず慢性的に悪心嘔吐を呈する疾患群であり、脳腸相関(Brain-Gut axis)の異常が基盤病態と考えられている。悪心嘔吐症状発現には脳幹部に存在する嘔吐中枢の関与が判っているが、慢性持続的な症状の維持には末梢消化管から持続的に異常シグナルが中枢へ放出すると考えられる。本研究では悪心嘔吐は胃の電気活動の異常による求心性シグナルの異常、特に胃壁の電気活動の伝搬の異常、が存在すると仮説を立てて検証を行った。CNVS患者および悪心嘔吐を呈しない慢性消化器症状群(計124名)を対象とし、4チャネル24時間胃電図(Electrogastrography:EGG)を測定し、1分毎の全周波数値(cpm)から4チャネル×1440分のマトリックスを作成して胃電気周波数の時間・空間活動を表現した。ビッグデータ解析を実行するためPython version3.6.2上でNumPy、SciPy、matplotlib、scikit-learnおよびKerasにて機械学習アルゴリズムを構築した。本機械学習を用いてCNVS群の弁別率を算出し、従来の単一周波数解析による弁別率と比較した。弁別率は単一周波数法で79.8%および時間・空間活動法で80.2%を示した。両群に統計学的有意差は認めなかった(p=0.813)。本研究でCNVSでは胃周波数活動および胃壁伝搬の両方異常の存在が示唆された。胃電気活動と右)前島皮質のパルス活動とのリンク(Richter C.G., et al. Neuroimage 146, 951-958, 2017)が示されていることから、右)前島皮質がCNVSの中枢神経側の重要な領域であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
胃電図データの機械学習計算プログラムの構築、動作確認および結果の妥当性の評価を行い、基礎的データを得た。基礎的データから島皮質ならびに脳幹部嘔吐中枢が重要な役割を行っている候補に挙がったが、脳幹部は脳MRI上アーチファクトが生じやすいため技術的課題として解決しなければならず、代替案も検討する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これらの基礎的データおよび今回作成した専用の機械学習アルゴリズムをベースに慢性的に消化器症状を呈する対象群における末梢消化管活動ならびに脳構造、機能、領域間結合および脳血流還流の評価に発展させる。 入院外来対象患者の他、募集により被験者収集を行う。 比較的集まりやすい健常者についてデータ収集を先に推進する。 症例数が少なく収集が困難である希少疾患については引き続き関連医療機関に検査対象者の紹介を依頼する。 検査機器入れ替えのためMRIの運用が一時的に停止する。このため研究の遅延が予想されるが、対策として他MRI施設への移行あるいは研究可能な部分を継続し、最も研究が推進する方策をとることで臨機応変に対応する。
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Causes of Carryover |
アーチファクトの問題および検査機器の運用の問題により被験者謝金が発生しなかったことによる。
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