2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者糖尿病における高血糖の是正が骨格筋に及ぼす影響に関する多面的検討
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17K09298
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 研 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20437403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樂木 宏実 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20252679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高血糖 / サルコペニア / 糖尿病モデル動物 / SGLT2阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高血糖がフレイル、サルコペニアの進展に関与しているという仮説のもと、①身体的フレイルを呈する高齢糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬による高血糖の是正が、筋量、筋力、身体機能、下腿筋エコーによる筋質評価、神経伝達速度評価などに与える影響を検討、②ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病モデルラットを用い、SGLT2阻害薬により炎症、筋内脂肪蓄積、AGE蓄積の減少などを介し、筋量減少、筋力低下が軽減するか否かを検討、することを目的としている。 ①に関して、2018年度に一度承認された臨床研究プロトコール(承認番号17250)で症例エントリーを開始したが、インスリン症例に限定していたこと、SGLT2阻害薬の使用が当初高齢者では慎重投与であったことから、プロトコール変更を余儀なくされたこと、さらに2018年度の臨床研究法改正による乗せ替えが必要となったことから手続きに時間を要した。最終的には少量のSU薬とグリニド とαグルコシダーゼ阻害薬の合剤との比較に変更となり、2018年12月に大阪大学倫理審査委員会の承認を受け(承認番号N18015:高齢糖尿病患者に対する食後高血糖改善がフレイル・サルコペニアの進展に及ぼす影響の多面的検討)、症例登録を開始した。 ②に関しては、ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットを用いた高血糖、SGLT2阻害薬を用いた高血糖是正による下肢筋への影響を検討するため、対照群(C)、対照+SGLT2阻害薬群(C+SG)、高血糖群(STZ)、STZ+SGLT2阻害薬群(STZ+SG)の4群間比較の検討を行った。検体回収までは終了しており、現在予定している実験を遂行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究:前年度に、介入に用いる薬剤をSGLT2阻害薬からαグルコシダーゼ阻害薬の合剤に変更したプロトコールが承認され、症例エントリーの準備が整ったことを報告したが、対象をインスリン症例に限定していたこと、臨床研究法改正による乗せ替えが必要となった。αグルコシダーゼ阻害薬の合剤による食後高血糖改善による骨格筋への効果を、少量のSU薬を対象として比較するプロトコールが最終的に承認された(2018年12月)。当初の予定よりやや遅れているが、現在3症例がエントリーしている。 基礎研究:ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラット(40mg/kg、1回腹腔内投与により作成)とSGLT2阻害薬を用い、高血糖の有無と血糖降下効果の有無による下腿筋への影響を検討した。8週齢の雄性SDラットを対照群(C)、対照+SGLT2阻害薬群(C+SG)、高血糖群(STZ)、STZ+SGLT2阻害薬群(STZ+SG)の4群に分け、STZ投与後高血糖を確認後4週間経過した後にSGLT2阻害薬の4週間経口投与を行い、17週齢時に各種臓器と両側下腿筋(ヒラメ筋、長指伸筋、腓腹筋、前脛骨筋)を採取した。下腿筋重量について、ヒラメ筋重量は4群間で差はなかったが、長指伸筋、前脛骨筋、腓腹筋はSTZ群でC群と比較し有意に重量が減少し、STZ群にみられた速筋群の重量減少はSGLT2阻害薬投与により部分的に改善を示した。以上からSGLT2阻害薬による高血糖是正により骨格筋重量の減少が抑制されたと考えられる。その機序として、既報からAGEの蓄積または脂肪蓄積による筋タンパク分解亢進、ミトコンドリア機能低下を想定し研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究に関しては、平成30年度中に臨床研究法の改正による移行も終了し、現在3症例がエントリーしている。CRCも1名雇用できたことにより、対象症例の抽出と進行が行いやすくなったため、今後登録症例数の増加が期待できる。 基礎研究に関しては、平成30年度から実働している大学院生を研究指導経験のあるスタッフが指導する体制が整った。
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Causes of Carryover |
進捗状況でも述べた通り、基礎研究のほうは動物実験を中心にやや遅れる程度で進行しているが、臨床研究のほうが本学倫理審査委員会との手続きと臨床研究法による載せ替えが生じたために、臨床研究の開始が予定より遅れたことにより臨床研究での経費使用が生じていないことが、次年度使用額が生じた主な理由である。
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Research Products
(1 results)