2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K09311
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
安田 修 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (00372615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福尾 惠介 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40156758)
大石 充 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50335345)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
血管の老化は人の老化に大きな影響を与えている。したがって血管老化を防止することは人の健康寿命の延伸に重要な役割を果たしうる。血管老化の主な形態は動脈硬化として現れる。動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞の原因病態であり、これらの疾患は高齢者の生活の質を低下させる寝たきりの原因となるため、社会的に重要な問題である。我々は動脈硬化のモデル動物として知られるApoEノックアウトマウスの動脈硬化血管から、複数の遺伝子をクローニングした。その中の一つを培養平滑筋細胞に発現させた結果、アポトーシスによって細胞死を起こしたため、この遺伝子をApopと名付けた。Apop遺伝子の発現はsiRNAを細胞に導入することによって制御することが可能であった。Apopが局在している細胞内ミトコンドリアは電子伝達系によってエネルギー分子であるATPを生産している。Apop遺伝子発現を抑制した細胞においては電子伝達系に電子を供給しているNADHの濃度が著明に上昇しており、Apopがエネルギー産生において機能していることが明らかとなった。Apop遺伝子を欠損したApopノックアウトマウスにおいては脂肪組織の縮小が認められ、行動試験において行動様式の変容を示した。明らかなうつ傾向や認知機能の低下は認められず、運動量の低下が認められた。これらの結果はApop遺伝子がエネルギー産生に関わっているだけでなく、生活様式にも影響しうることを示している。脂肪組織の縮小によって、動脈硬化の発症を抑制し、健康寿命の延伸に寄与しうる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動脈硬化の発症には血管平滑筋細胞の形質転換が重要な役割を果たしている。炎症細胞の刺激を受けた平滑筋細胞は収縮型から合成型へと形質転換し遊走、増殖、細胞外基質を生産して動脈硬化プラークを形成する。Apopは動脈硬化を起こした血管の平滑筋細胞で発現している遺伝子として同定された。Apopは細胞のエネルギー産生に深くかかわっていることを明らかにし、動脈硬化プラークの平滑筋細胞増殖に関わっていることが示唆された。また認知機能やうつ病発症に関しては発現が影響しないことを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
Apop遺伝子の欠損は行動量や運動量に影響するが、うつ病発症や認知症発症には影響しない可能性が示された。またApopはミトコンドリアタンパク質であり、ミトコンドリアの最も大きな機能であるエネルギー産生に関わっている。今後はApopのミトコンドリア機能調節における役割について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果によって研究方法の一部を変更する必要が生じたため、次年度においてさらに詳細に検討し、併せて学会発表を行う予定である。
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