2017 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋ミトコンドリア異常をきたすエピゲノム変容の修復によるサルコペニア治療の開発
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17K09323
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三石 正憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50468485)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サルコペニア / 骨格筋ミトコンドリア / アミノレブリン酸 / 身体能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ミトコンドリアで作られるアミノ酸誘導体であるアミノレブリン酸(aminolevulinic acid, ALA)によるサルコペニアならびに身体能力改善効果を検討した。ALAはミトコンドリア電子伝達系の電子担体であるヘムやシトクロムの原料となる重要分子で、加齢性疾患の発症原因となる可能性が注目されている。C57bl6マウスにALA含有飼料を8週齢から8週間与え、ダイナモメーターならびにトレッドミルで身体能力(筋力, 持久力)を評価した。評価終了後に筋肉量を評価し、定量的PCR法にてALA投与マウス骨格筋のミトコンドリア関連分子ならびに筋肉量制御因子の発現を検討した。 ALA投与マウスでは骨格筋ミトコンドリアの増加と持久力・筋力の向上、さらには筋肉量の増加を認めた。骨格筋の定量的PCR法では、ミトコンドリア活性化因子(PGC-1α, UCP3, ATPsyn, Cox4i1)の発現亢進、筋肉分解因子(Atrogin1, Murf1)の発現低下を認め、筋肉量制御の重要因子であるtarget of rapamycin complex-1 (TORC-1)は活性化していた。メタボローム解析にて、TORC1を活性化することが知られているロイシンやイソロイシンなどの分枝鎖アミノ酸branched-chain amino acid (BCAA)が、ALA投与マウスの大腿四頭筋で増加していた。大腿四頭筋の定量的PCR法では、BCAAの分解酵素であるbranched chain aminotransferase (BCAT)の発現が低下していた。以上の結果より、ALAは骨格筋ミトコンドリアを活性化するのみならず、BCATの発現低下によるBCAAの分解抑制を介して筋肉量を増加させたと考えられた。ALA投与による筋肉の量と質の改善により、筋力・持久力が効果的に改善すると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスにおいてALA投与により骨格筋ミトコンドリアを活性化するのみならずTORC-1を介したタンパク合成促進およびBCATを介したBCAA分解抑制により骨格筋量を増加させていることが示されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
我々がこれまでに骨格筋ミトコンドリアの活性化や身体能力改善効果を報告した消化管ホルモンであるグレリンが、サルコペニア関連遺伝子のエピゲノム修飾に与える影響を検討し、サルコペニア治療への応用の可能性を検討する。
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