2018 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋ミトコンドリア異常をきたすエピゲノム変容の修復によるサルコペニア治療の開発
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17K09323
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三石 正憲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50468485)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サルコペニア / 骨格筋ミトコンドリア / ステロイド / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで骨格筋ミトコンドリア異常のサルコペニアにおける意義を検討した。ミトコンドリア電子キャリアであるアミノレブリン酸を用いたミトコンドリア活性化によるサルコペニア治療を開発し、そのヒトへの応用を目指した研究課題である、「骨格筋ミトコンドリアとアミノ酸代謝に着目したサルコペニア先制医療の開発」がAMED研究課題に採択された。 サルコペニアをきたす代表的な病態として、グルココルチコイド作用の過剰でもたらされるクッシング症候群や、ステロイドの長期内服が知られている。そこで本年度は、新しいサルコペニアモデルとしてデキサメサゾン(DEX)投与マウスにつき検討し、そのエピゲノム変容を調べることとした。皮下埋め込み型ペレットを用いてDEXをC57bl/6マウスに21日間投与したところ、骨格筋量の減少と握力・持久力の低下を認め、また、糖負荷試験で耐糖能の悪化が顕著であった。このマウスにおいて、エピゲノム変容を検討したところ、末梢血単核球において、耐糖能制御に関与する分子のプロモーター領域におけるヒストンアセチル化の亢進を顕著に認めた。そこで骨格筋ミトコンドリア異常の原因となるエピゲノム変容のみならず、DEX投与による耐糖能障害と関連したエピゲノム変容と、その修復の可能性につき検討した。 DEX投与マウスでは、インスリン分泌を抑制し血糖上昇に関与するホルモンであるDPP-4の血中濃度が増加しており、このことがステロイド糖尿病での血糖上昇に関与する可能性が考えられた。また、DEXによる血糖上昇とDPP4-活性の亢進は投与終了35日後においても遷延していた。 これまでのヒト観察研究の報告で、ステロイド糖尿病がステロイド中止後も遷延し、ステロイド投与の“記憶現象”があるものと認識されている。DEXによる持続的なDPP-4活性亢進がステロイド投与記憶の本体となっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまにミトコンドリア電子キャリアであるアミノレブリン酸を用いたミトコンドリア活性化によるサルコペニア治療を開発し、そのヒトへの応用を目指した研究である研究課題である、「骨格筋ミトコンドリアとアミノ酸代謝に着目したサルコペニア先制医療の開発」が本年度AMED研究課題に採択された。また、新しいサルコペニアモデルとしてデキサメサゾン(DEX)投与マウスの検討を行い、骨格筋料の減少と握力・持久力の低下および耐糖能の悪化のメカニズムをエピゲノム変容の観点から検討し、血糖上昇のメカニズムとしてDPP-4活性亢進が関与している可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
環境因子の影響を遺伝子に刻みこむメカニズムとして、クロマチンエピゲノム修飾が知られており、ステロイド糖尿病の発症にも、エピゲノム変容が関与しうると考えられる。今後の検討で、グルココルチコイド投与に伴うDPP-4遺伝子のエピゲノム変容の検討を予定している。
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