2017 Fiscal Year Research-status Report
十二指腸粘膜バリアを標的とした機能性ディスペプシア治療薬開発に向けた基盤研究
Project/Area Number |
17K09358
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
福居 顕文 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60725307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00305575)
高木 智久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70405257)
半田 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90381970)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 機能性ディスペプシア / 十二指腸粘膜バリア / 腸内細菌 / タイトジャンクション |
Outline of Annual Research Achievements |
京都府立医科大学附属病院ならびに京都府立医科大学附属北部医療センターで、国際的な診断基準であるRomeⅣ基準を満たしたHericobater pyroli陰性機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia:FD)成人患者11例ならびに健常成人9例を対象に、唾液、ならびに、上部内視鏡検査下に食道・胃・十二指腸の粘膜擦過液を、採取用ブラシを用いて採取した。検体は微生物の系統解析で利用される16SリボソームRNA領域を増幅し、次世代シーケンサーを用いて大量の配列を取得した。得られた塩基配列について、16S rRNAデータベースに対する相同性検索および系統分類解析を実施した。得られたデータをもとに①腸内細菌叢の分布をFD患者と健常人とで比較検討した。また②FD患者の症状スコアを出雲スケールならび改定Fスケールを用いて評価し、FD症状と腸内細菌叢との関係性を評価した。本研究は、京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認(ERB-C-839)を得て実施した。 ①門レベルの比較においてFD患者では健常人と比較し、口腔内、食道、胃、十二指腸粘膜いずれにおいてもFirmicutesが有意に高値であった。さらに属レベルの検討においてもFD患者では健常人と比較し、口腔内、食道、胃、十二指腸粘膜いずれにおいてもStreptococcusが有意に高値であった。②改定Fスケール、出雲スケールを用いたFD症状スコアと十二指腸Streptococcusには一定の相関が認められた。 FD発症の背景には上部消化管領域におけるFirmicutes門Streptococcus属の関与が示唆された。また、Streptococcusは、食後膨満感や食後心窩部痛といったFD症状の増悪に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、FDの病態形成にはストレスに対する脳腸相関を介した消化管粘膜の過剰・異常応答が注目されているが(Gastroenterology 2006,130: 1466-79)、近年、十二指腸粘膜のバリア機能異常や免疫異常が関与していることが示唆されている(Gut 2014,63:262-71, Engl J Med 2015,373:1853-63)。腸内細菌叢を同定・解析する技術はめざましく進歩しており、十二指腸の腸内細菌叢を網羅的に解析することで病態への関与や、病因の解明、さらにはそれらの細菌叢をコントロールすることで疾患の治療に寄与する可能性が高まってきた。 平成29年度は、特に腸管バリア維持機能に関与する粘膜関連細菌叢の解析手法の確立と研究データの統合的解析を中心に行った。ヒト内視鏡下採取検体を利用した16S rRNAメタゲノム解析方法の確立を目標に、内視鏡下採取検体に適した保存液および粘膜組織のRNAの品質を落とさないRNA抽出方法を確立した。研究グループ全体で手法を共有するだけでなく、内視鏡下採取検体の16S rRNAメタゲノム解析における世界標準となるような手法提案を目指す研究を行った。 採取したヒト内視鏡採取検体を用いてFD発症の背景には上部消化管領域におけるFirmicutes門Streptococcus属の関与が示唆されるデータを得た。また、Streptococcusは、食後膨満感や食後心窩部痛といったFD症状の増悪に関与している可能性が示唆されることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は、機能性消化管障害と考えられているFD病態に、十二指腸粘膜における器質的異常が関与していることを明らかにするものであり、本研究は3年間の基盤研究により、「粘膜関連細菌叢-腸管バリア維持機能」の解明を基軸に革新的なFDの予防法・治療法に発展するシーズ開発を目標としている。今後、ex vivoバリア維持機能評価手法の確立とシーズ分子種の評価を行い、十二指腸粘膜バリア維持機能に関わるTJ構成蛋白質の発現解析(構造変化解析)を行っていく。 また、今年度に習得し得られたバリア維持機能に関与する粘膜関連細菌叢の解析手法の確立と研究データの統合的解析を行い、FD患者と健常人との内視鏡下採取検体の16S rRNAメタゲノム解析およびその細菌叢における代謝パスウェイ予測を行う。これによりFD患者における異常を呈する細菌グループ、代謝パスウェイを詳細に把握し、疾患制御に繋がる新規代謝産物の選抜に役立てる。
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