2018 Fiscal Year Research-status Report
シクロスポリンによるFLIPを介した腸上皮細胞ネクロプトーシス抑制効果
Project/Area Number |
17K09367
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
櫻庭 裕丈 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (90422063)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ネクロプトーシス / シクロスポリン |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス(C57BL/6)に4%DSSを自由飲水させた急性腸炎モデルにおいてシクロスポリン投与による、ネクロプトーシス調節分子の発現の変化について経時的な解析を行った。DSS投与0,1、2日目の分離した腸上皮から蛋白抽出を行いのネクロプトーシス調節分子RIPK3, AMPKの発現をウェスタンブロットで解析した。DSS投与0、1,2日目いづれにおいてもコントロール群とシクロスポリン投与群との間に有意な発現の差は認めなかった。一方、ネクロプトーシスからの炎症誘導メディエーターであるHMGB-1の発現は、分離した腸上皮細胞分画においては、DSS投与0,1日目でコントロールに比べてシクロスポリン投与群で有意に抑制されていた。粘膜下組織の分画では、DSS投与2日目において、コントロールに比べてシクロスポリン投与群で有意に抑制されていた。ネクロプトーシス調節因子であるRIPK3, AMPKを介さない、MLKL及びRIPK1の発現抑制効果の存在が示唆された。 RIPK3, AMPK以外のネクロプトーシス調節因子であるMLKL及びRIPK1などを介したHMGB-1の発現抑制効果、またはネクロプトーシス調節因子そのものを介さずに炎症誘導物質の産生を抑制する可能性が考えられる結果が得られた。そのため、分離した上皮細胞のMLKL及びRIPK1の発現について解析したが、シクロスポリン投与による発現の抑制効果は認められなかった。DAMPmoleculeについてHMGB-1以外にHSP60, 70の発現も検討したが、シクロスポリン投与による優位な変化は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シクロスポリンによるネクロプトーシス関連分子であるHMGB1の発現は抑制効果を認めたがその発現調節について最も想定していたRIPK3の発現に変化がなかった。追加で解析したMLKL及びRIPK1の発現にも変化なく、またHMGB1の発現抑制効果は認めたが、他のDAMP分子であるHSPは優位な発現の変化がなかった。したがって現在IL-33やIL-1についても検証中である。
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Strategy for Future Research Activity |
DSS誘発大腸炎において、ネクロプトーシスからの炎症誘導メディエーターであるHMGB-1の発現は、粘膜下組織の分画でコントロールに比べてシクロスポリン投与群で有意に抑制されていた。その機序について、まずは腸上皮細胞ネクロプトーシス抑制を介した経路についてRIPK3, AMPK、MLKLあるいはRIPK1の発現にも差がみられなかった。したがってネクロプトーシス以外の経路を介したHMGB1の発現調節効果をみていく。私たちのこれまでのほかの研究テーマでの解析において、シクロスポリンの腸上皮細胞障害抑制効果は、多剤併用抗菌薬投与で腸内細菌叢に変化を起こすと、消失することがわかっている。そのモデルでのDAMPの発現について解析し、腸内細菌叢と治療効果の関連についても追加解析する方針である。腸内細菌叢からの自然免疫シグナルの変化がネクロプトーシス制御に与える影響についても検証する。
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