2017 Fiscal Year Research-status Report
The target to treat for ER stress in patients with IBD
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17K09378
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
今枝 広丞 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20623317)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 小胞体ストレス / TNF-α |
Outline of Annual Research Achievements |
まずは内視鏡生検によるヒト大腸粘膜での短鎖脂肪酸受容体の発現は主に上皮細胞で認められ、健常者に比較して潰瘍性大腸炎やクローン病で亢進していた。興味深いことに、これらの発現は寛解期よりも活動期粘膜で亢進しており、抗TNF-α抗体製剤投与患者で有意に増強されていた。 これらの結果は小胞体ストレスシグナルにTNF-αシグナルがクロストークしていると考えられた。そこでin vitroにヒト大腸上皮培養細胞Caco-2細胞をThapsigarginでオートファジーにより小胞体ストレスを誘導し、XBP1の発現を亢進させると、その発現とGPR43の発現が相関した。また、これらの発現誘導はともにTNF-αで抑制された。 これらのことより、小胞体ストレスシグナルに対してTNF-αシグナルは抑制的に作用しており、炎症性腸疾患においてTNF-αを抑制することが、腸内細菌による恒常性に寄与すると考えられた。 以上のことよりデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発腸炎モデルマウスでGPR43 mRNAの発現が有意に亢進していたが、少数での検討であったため、nを増やして検討する。GPR41, GPR43, GPR109a, Xbp1, CHOP, IRE1a, ATF4, ATF6の発現も同様に検討し、TNF-αのqPCR値との相関について検討する。さらに平成29年の実験(3)で検討を行ったPUMA, Bax, Bad, Bid, p53の発現をこのマウス腸炎モデルで調査し、GPR41, GPR43, GPR109aの発現との相関を検討するための実験系構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潰瘍性大腸炎とクローン病の大腸粘膜で短鎖脂肪酸受容体GPR41, GPR43, GPR109a, GPR120 の発現が疾患活動性や内視鏡所見と相関するかどうかを検討し、サイトカインやケモカインのプロファイルとどのように相関しているかを明らかにする。次に、既報の通り、潰瘍性大腸炎とクローン病の腸管粘膜で小胞体ストレスシグナルの発現が亢進しているかどうかを検討した上で、短鎖脂肪酸受容体と相関していることを検討する。小胞体ストレスはXbp1, PERK, IRE1a, ATF6 それぞれを介する経路があることが明らかとなっているが、どの経路と相関するかを明らかにし、Ern1 やSTF-083010 でそれぞれ選択的に阻害することによって短鎖脂肪酸受容体の発現が亢進または抑制されることを検討し、最終的には創薬への基礎データとした。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性腸疾患治療におけるプロバイオティクスの作用機序は不明な部分が大きく、欧米ではいまだ積極的に併用されることが少ない。本研究はプロバイオティクスの作用が炎症性腸疾患の病態のひとつである小胞体ストレスと強く関与していることを証明するとともに、既存の治療である抗TNF-α抗体製剤の作用効果と相乗的に作用することを明らかにする。 (1) 炎症性腸疾患大腸粘膜における短鎖脂肪酸受容体の発現を検討する。 プロバイオティクスによる腸内環境安定の作用機序を解明するため、ヒト大腸粘膜における短鎖脂肪酸受容体の発現細胞を検討する。消化管に発現している短鎖脂肪酸受容体としてGPR41 (FFA3), GPR43(FFA2), GPR109a (PUMA-G), GPR120 (FFA4)がある。しかし、それぞれが発現する細胞は免疫担当細胞、上皮細胞、脂肪細胞、腸管内分泌細胞と多岐にわたっている。 そこでまず、免疫組織化学とqPCR により健常者と大腸クローン病、潰瘍性大腸炎の患者から大腸内視鏡にて採取した生検検体を用いて、それぞれの短鎖脂肪酸受容体がどの細胞に発現していて、健常者と炎症性腸疾患患者とで差があるのかを検討する。 (2) 炎症性腸疾患大腸粘膜における小胞体ストレスシグナルの発現を検討する。 短鎖脂肪酸受容体の発現が小胞体ストレスと関連していることを証明するため、活性型(Spliced) Xbp1, 非活性型(Unspliced) Xbp1, PERK, CHOP, IRE1a, ATF6, ATF4 の発現をmRNA、タンパクレベルで確認し、それぞれが短鎖脂肪酸受容体の発現と相関しているかをqPCR を用いてmRNA レベルで検討する。有意差があったものに関しては、ウェスタン・ブロッティングを用いて、タンパクレベルでも検討する。
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