2018 Fiscal Year Research-status Report
カニクイザルを使用したMHCホモ接合体iPS細胞由来MSCによるDSS腸炎の治療
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17K09379
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
小笠原 一誠 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20169163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 靖 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (90324566)
石垣 宏仁 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90432301)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移植・再生医療 / DSS腸炎 / iPS細胞 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸炎の作成】 昨年度に特定のMHC(主要組織適合遺伝子複合体)をheterozygousに有する雄のカニクイザル(Mafa HT1 heterozygousカニクイザル)が確保でき、下部消化管内視鏡の手技の確立が完了した。そこで、本年度はDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)を用いたカニクイザル慢性腸炎モデルの作成を試みた。予備実験として、既報(Nat Commun. 2015)に従い、non-Mafa HT1雄のカニクイザルを用いて、0.25%DSSを100mL/Kg/dayで投与した。DSS投与後9日目に著明な血便、嘔吐、食欲低下が観察され、動物愛護の観点から実験を中止した。大腸内視鏡ではS状結腸に狭窄を認め、粘膜の粗造、易出血、びらんを認めた。生検組織では、びらんと陰窩の萎縮と脱落、杯細胞の減少が見られた。急性腸炎に矛盾しない所見と考えられた。 2週間の休薬の後に、半量の0.125%DSSで投与したところ、下痢や血便、食欲低下はおこらなかった。投与14日目に行った内視鏡においても、わずかに血管透見不良を認めるのみであった。生検組織においても軽度の炎症を認めるのみであった。そこで、DSSの量を0.2%に増量したところ、投与14日目に血便と軟便の排出、著明な食欲低下とるい痩が出現した。内視鏡では、盲腸に粘膜の狭窄と潰瘍形成、結腸の一部に血管透見不良を認めた。以上から、0.2%-0.25%DSS(100mL/Kg/day)を投与することで、急性腸炎がおこることが判明した。 一方、Mafa HT1 heterozygousカニクイザルを用いて、0.15%DSS(100mL/Kg/day)を投与した(2週投与、2週休薬)。下痢や血便などの症状は見られなかった。70日間の投与で、内視鏡的に軽度の腸炎を認めるのみであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DSS慢性腸炎の作成は確立していないが、急性腸炎の系は確立した。慢性腸炎の急性増悪モデルとしての目処はたった。疾患モデルの確立に時間を要したため、iMSCを用いた治療実験には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は0.15%DSS(100mL/Kg/day、2週投与、2週休薬)を飲ませつつ、一時的に0.25%DSS(100mL/Kg/day)に増量することで、Mafa HT1 heterozygousカニクイザルにおいて慢性腸炎の急性増悪モデルとしてHT1 homozygousの iMSC-IL10とiMSC-IL10を用いた治療を行う。この実験から、iMSC-IL10の優位性が認められたら、HT1 homozygous iMSC-IL10を用いて、non-Mafa HT1カニクイザルでの治療実験も行い、MHCを一致させることの優位性も検討する。 昨年、Mafa HT1 homozygousカニクイザルから作成したiPS由来間葉系幹細胞はIL-10産生が認められなかったことから、IL-10遺伝子を導入してIL-10産生iPS由来間葉系幹細胞(iMSC-IL10)を作成した。本年度は、β2 macroglobulinの遺伝子をノックアウトすることでMHCの発現を消失させ、MHCに関係なくあらゆる個体に投与可能で、iMSCのユニバーサル化(Nat Biotechnol. 2017)を進めるために、iMSC-IL10 B2M KOも作成した。次年度はさらに、この細胞にMafa-Eを遺伝子導入することで、NK細胞からの攻撃を回避するために「iMSC-IL10 B2M KO Mafa E」を作成する。このユニバーサルiMSCを用いて、non-Mafa HT1カニクイザルでの腸炎治療実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
カニクイザルでのDSS腸炎モデルの作成が遅れたため、治療実験を開始することが出来なかったので、物品費に余剰が出た。次年度は治療実験を開始するので、物品費を完全に使い切ることができると考えている。
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