2018 Fiscal Year Research-status Report
The function of new intestinal ionchannel on gastrointestinal motility
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17K09391
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
神谷 武 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10254301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (20326135)
植田 高史 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90244540)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ASIC4 / 消化管運動 / 免疫沈降 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、消化管運動の調節に関わる新規イオンチャンネルの探索を行なっており、前年度に引き続きマウスの空腸から遠位結腸にかけて筋間神経叢に強い発現を認めた酸感受性イオンチャネル4(ASIC4)に着目した。 本年度は、本学大学院医学研究科薬理学講座の河辺先生にご協力を仰ぎ、ASIC4ノックアウトマウスと野生型マウスで腸管運動測定装置(マグヌス法)を使ってマウス摘出腸管(回腸)の収縮・弛緩を測定した。刺激を加えない条件下の自発電気活動に2群間で大きな差はみられなかった。次に、前年度までにASIC4とNF-H、ChAT、nNOS、TRPV2が一部の細胞で共発現していることを見出したことから、アセチルコリン、ニコチン、プロベネシド(TRPV2アゴニスト)を投与し、これらが腸管運動に及ぼす影響も観察した。その結果、両群ともにアセチルコリンに対する腸管収縮は濃度依存性に強くなったものの、その収縮の程度はASIC4ノックアウトマウスの方が野生型に比べ小さい傾向にあった。ニコチンは筋間神経叢のニューロンに直接作用して腸管運動を調節することが知られている。ニコチンに対する反応は、2群ともある濃度までは濃度依存的に収縮が強くなる傾向があり、この収縮反応の程度に有意差はなかった。さらにニコチンを高濃度(10-5M)で投与すると、野生型マウスでは収縮に続いて弛緩反応が観察された。一方、ASIC4ノックアウトマウスではこの弛緩反応はほとんど観察されなかった。TRPV2アゴニストであるプロベネシドを投与するとASIC4ノックアウトマウス、野生型マウスのいずれにも弛緩運動が観察されたが、その反応は小さく2群間で有意差は認められなかった。これらの結果からASIC4は筋間神経叢の抑制性神経と興奮性神経の両者でその活動性を調整する役割の一端を担っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まではマウスを用いて、分子生物学的、形態学的解析を行い、主に空腸から遠位結腸の筋間神経叢に発現しているASIC4を消化管運動の調節に関与する新規イオンチャネルとして着目し、さらにASIC4と種々の神経マーカーの二重染色を行い、ASIC4がNF-H、ChAT、nNOS、TRPV2と一部共発現していることを突き止めた。ASIC4の機能解析では、代謝ゲージを用いてASIC4ノックアウトマウスと野生型マウスの糞便量測定及び、フェノールレッドによる消化管輸送能評価を行い、臨床病態での違いがないかを確認した。その結果、糞便量では差がなかったが、輸送能ではASIC4ノックアウトマウスで遅延する傾向がみられた。 平成30年度は、腸管運動測定装置(マグヌス法)を用いてさらに機能解析を進めた。その結果、腸管に作用する既知の代表的な神経伝達物質(アセチルコリン、ニコチン)に対して、ASIC4ノックアウトマウスと野生型マウスで、異なる収縮および弛緩反応が認められた。以上より、ASIC4は筋間神経叢における収縮と弛緩の両者に関与していおり、さらに収縮と弛緩の程度を比較すると弛緩反応に大きな違いがみられたことは、少なくともASIC4が腸管の弛緩反応に何らかの形で関わっていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果より、ASIC4は腸管神経叢で興奮性神経、抑制性神経のどちらにも発現し、特に弛緩反応については大きな役割を担っている可能性が示唆された。腸管弛緩反応に関わる因子は数多く報告されており、正常無刺激状態ではそれらの因子が複雑に作用していると考えられる。そこで来年度我々は一酸化窒素(NO)ドナーなどによる人工的な刺激下での腸管輸送能を野生型マウスとASIC4ノックアウトマウスで比較することで、腸管弛緩反応におけるASIC4が関わる経路あるいは相互作用する候補分子を見つけ出す実験を進めていく予定である。ASIC4は同じ膜タンパクであるTRPV2と一部共存していること、並びにTRPV2がNOを介した腸管弛緩反応に関与するという報告がある (Mihara et al., J Neurosci, 2010)ので、まず両者の関係を検討する。一方、腸管機能におけるASIC4の役割を決定する上で重要な点はASIC4のアゴニストを投与した時の2群間の応答差を解析することであるが、ASIC4のアゴニストは未だ不明であるため、アフリカツメガエルの卵母細胞にASIC4を強制発現させてASIC4のアゴニストを探索する実験も引き続き進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
前年度予定していたアフリカツメガエルの卵母細胞にASIC4を強制発現しアゴニストを探索することに着手できなかったため。
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